【事件概要】
2025年7月、水木しげる氏がアイズナー賞の殿堂入りを果たした。評価されたのは、2012年に最優秀アジア作品賞を受賞した『総員玉砕せよ!』である。本作は、終戦間近の1945年3月、ニューブリテン島での「玉砕命令」と、実際には生き延びた兵士たちへの苛烈な責任追及を描いている。
作品中の木戸参謀のモデルは実在の元軍人・松浦義教で、終戦後もラバウルに残留し、戦犯弁護人を務めた。松浦は高潔さと忠誠心で知られるが、玉砕を強要し、生存者に自決を命じたという陰惨な史実が後年発覚、水木はそれを90%事実として作品化した。
【コメント】
「忠誠心」と「責任感」の名の下に、現実から目を逸らし、部下の命を投げ捨てる行為が正当化されたとき、人間の理性は制度に殺される。松浦義教は軍の期待通りの「忠義の士」として振る舞ったが、実際に彼が果たした役割は、命令に背かず死を命じる装置だった。問題の本質は、軍組織において「生存」が恥、「死」が美徳とされた異常な規範にある。この規範は軍上層部の精神主義と制度的命令体系が生み出した。
では、何を変えるべきか。①軍事指揮官の戦時行為を記録・検証し、明文化された倫理指針を後世に残すこと。②「命令遵守」を美徳とする教育を見直し、命の尊厳を軸とした人道教育へ移行すること。③戦争体験の記録と証言を公共教育に組み込み、記憶の風化を防ぐこと。英雄の影に犠牲者の声が埋もれてはならない。忠誠が命を奪うなら、それはもはや美徳ではなく、暴力にすぎない。
ネットからのコメント
1、後年、水木大先生は自身が描いた戦記ものについて、「もっと苛烈に表現すればよかった.
..」と娘さんに こぼしていたという。南方に限ったハナシではなく、中国(満州)でも参謀 士官クラスは、民間人を圧しやって迫り来るソ連軍から真っ先に逃げおおせた....戦争と軍隊の醜悪さを学ぶなら、水木大先生の漫画と映画「兵隊やくざ」を観賞することを 若い人たちに薦めたい。
2、戦争の本質ですね。「やるしかない」と熱心に叫ぶ奴らほど最前線に出てこず、うまくいかなければ他者に責任転嫁。いや、うまくいかない会社や役所も似たようなもんなので、日本人組織の悲しい性なのかな。亡くなった人が、うかばれないと言われないような行動を指導層には求めたいです。責任逃れしたいがために、集団決議に持ち込みたい日本人のトップには特に求めたい。
3、「参謀はテキトーな時に逃げる」……日本陸軍は責任は部隊長が負うもので参謀は責任取らないが不文律として存在していました。故に無残な敗戦をやらかした中央の若い参謀も責任取ることなく戦後も表に出て政界財界などで活躍しています。ふざけた話で水木しげる氏もその辺の憤りがあったのでしょうね。
念の為だが記事中の今村司令官は立派な方で、現地勤務ではなく、中央にいれば対米戦は起こらなかったと言われる一人です。戦後は自己謹慎し亡くなった部下の弔いに余生を費やしました。
4、俺は水木先生の作品が好きだし、背景とかもう芸術の域だと思うから、他のどんな参謀より水木先生が生還されて良かったと思ってます。結局突き詰めればそういう問題。そこの選択に遺恨を残さないためにも、きちんと学習して素養を積んでくださいということ。
引用元:https://news.yahoo.co.jp/articles/a7c944ec52a6ddfe6bfbc0285753930f5010900e,記事の削除・修正依頼などのご相談は、下記のメールアドレスまでお気軽にお問い合わせください。[email protected]