昭和35年、東京下町。72歳の小野寺ハルは、取り壊しが決まった古い写真館の前に、毎朝六時から木椅子を置き、持ち主不明の家族写真を返そうとしていた。 ある朝、一人の女性が写真の中の娘・澄子を見て顔色を変える。十五年前の東京大空襲で、行方不明になった六歳の娘と一緒にいたというのだ。 澄子もまた、あの日から帰っていない。亡き夫が残した古い記録には、二人の名前が並んでいた。 戦争に引き裂かれた家族の足跡を追い、十五年間閉ざされていた真実へと近づく、母たちの物語。
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