"4200万円の隠し家" 第14話
慎也とも連絡を取っていない。
んでいるからではない。
必がなくなったからだ。
ある休、社会になって暮らしをしている娘の美咲と、駅のカフェで会った。両親の婚を事報告にい形でらせてしまったことが気になっていたが、美咲は私の顔を見ると「より元気そう」と笑った。
「急なことで驚かせたよね。ごめんね」
私がそう言うと、美咲は首を横に振った。
「お母さんが決めたことなら、それでいいとう。お父さんのこと、かなり変だったんでしょう」
娘は細かな事を無理に聞かなかった。
しばらくして、父の遺産の話になった。
「おじいちゃんが残してくれたお、私のためにも取っておくって言ってたでしょう」
「うん。あなたに何かあったのためにとってる」
「それ、やめてよ」
私は驚いて娘を見た。
美咲はカフェラテのカップを両で包みながら笑った。
「私はもう自分で働いてる。困ったら自分で何とかするし、本当に困ったはその相談する。だから、おじいちゃんのおはまずお母さんののために使って」
その言葉を聞いた瞬、私は目がくなった。
慎也の嘘をったも。
文から父の遺産をせと言われたも。
親族会議で責められたも。
泣かなかった。
それなのに。
「自分のために使って」
という娘の言で。
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張り詰めていたものが。
ようやくほどけた。
父が残した2400万円を、私はずっと「守らなければならない」だとっていた。夫の借から守り、老のから守り、娘の将来のために守ることばかり考えていた。
けれど父は。
私をのでかすために。
働いていたわけではない。
きっと。
自分の娘が。
困った。
しして。
自分のを選べるように。
残してくれたのだ。
それから私は、休になると古マンションを見て回るようになった。
条件は派ではなかった。
駅から徒歩10分ほど。
スーパーと病院がい。
エレベーターがある。
当たりがよい。
で無理なく維持できる。
管理状態が悪くない。
豪華なシステムキッチンも、きな庭も必なかった。
4200万円のあのには、へ見せるためのものがたくさんあった。
私が欲しかったには。
自分がして暮らすためのものだけが。
あればよかった。
数か、築数はし経っているものの、入れのき届いた2LDKのマンションが見つかった。価格もこれからの収入と資産を考えれば無理のない範囲で、父の遺産から部をとして使っても分な老資を残せる計算だった。
契約の。
産会社の担当者から分い類を渡された。
私は枚ずつ確認した。
事項。
管理費。
修繕積。
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固定資産税の見込み。
将来の規模修繕。
駅までの距。
隣環境。
慎也の契約を見たとは。
何もかも。
違った。
最のページに、所者となるの名をく欄があった。
川佳代。
自分の名だけが記されている。
けれど、名義だから嬉しいのではなかった。
あの4200万円のとの本当の違いは。
名義の数ではない。
慎也のは、私がらない所で「族のため」と勝に決められただった。
今のは。
自分で見た。
自分で歩いた。
自分で計算した。
自分で選んだ。
そこが違った。
私はボールペンを握り、ゆっくり署名した。
1か、しい部へ引っ越した。
向きの窓から午のが入り、リビングの隅には父の写真を置いた。朝になるとさな湯呑みにお茶を入れ、写真のへ置くことが私の課になった。
「お父さん、しいだよ」
写真の父は。
いつものし照れくさそうな顔で。
笑っていた。
ある、美咲が遊びに来た。
「お母さん、ここいいね。駅もいし、静かだし」
「でしょう?」
「おじいちゃんもしてるんじゃない?」
私は笑った。
「そうだといいね」
夕方、娘を駅まで送り、で部へ戻った。
鍵を差し込み。
ゆっくり回す。
さな音とともに。
扉がく。
誰かに隠されたローンもない。
らないところで保証にされたもいない。
私のおを勝に返済計画へ入れているもいない。
あるのは。
自分で選んだ暮らしだけだった。
えばすべての始まりは、義母からかかってきた本の話だった。
「のローン、なんでまだ払ってないの?」
あの。
私は何もらなかった。
だから聞いた。
「どのですか?」
あの質問を境に、27信じていた夫婦の形は崩れた。
けれど今はう。
壊れたのではなく。
隠されていたものが。
見えるようになっただけだったのだ。
母親を助けたいという気持ちは悪くない。
婚した妹を支えたいとうことも。
族いの優しいになり得る。
ただし。
誰かを助けるために。
別の誰かへ嘘をついた瞬。
その優しさは。
もう優しさではない。
「族だから、最は払ってくれる」
「妻だから、最は許してくれる」
そんな勝な提を。
の設計へ。
き込んではいけない。
慎也の返済計画には。
私の2400万円も。
私の老も。
私の選択も。
本のらないところで。
当然のように入れられていた。
だから私は。
そこからつだけ。
取り戻した。
自分のの。
決定権を。
しいの契約にかれている「川佳代」という名を見るたび、私はそのことをいす。
それはただの所者名ではない。
度は誰かの都で使われかけたを。
もう度。
自分のに戻したの名だった。