"十年目の数珠" 第8話
最初は恐ろしかった。
しかしが経つにつれ、表向きの活はっていった。
事業はうまくいき、しい族もできた。
それでも完全に忘れることはできなかった。
夜になると田の顔が浮かび、罪悪から寺に通い、お布施をした。
「許されたかった」
吉田は取調でそう言った。
その声は、ひどく掠れていた。
吉田の自を受け、警察は彼が示したへ捜索隊を送った。
199511末。
寺から約1kmれたいの底で、骨が発見された。
岩の隙に隠され、10の、と落ち葉に埋もれていた。周囲はの根が張り、普通に歩くだけでは見つからない所だった。
科学捜査研究所の鑑定の結果、骨は40代半の男性のものと推定された。歯科記録と照した結果、田誠であることが確認された。
蓋骨の部には、岩にぶつかったとみられる損傷があった。
10ぶりに、田は族のもとへ戻ることになった。
19962、平成82。
吉田の裁判が始まった。
検察は殺罪を主張した。銭トラブルから田を害し、遺体を隠し、証拠を偽装したとした。
方、吉田の弁護は偶発な事故だったと主張した。をめぐる論ので押しいとなり、田が倒れてした。計画な殺ではないという主張だった。
しかし裁判所は、事故のをく見た。
遺体を隠したこと。
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数珠を俊の部に埋めたこと。
偽のを残したこと。
朝の目撃証言を作り、捜査を誤った方向へ導いたこと。
それらはな犯罪隠蔽為だった。
吉田には懲役15が言い渡された。
法廷で、田の妻は涙を流した。
「10待ちました。きて帰ってくることを、何度もに見ました。でも、こんな形で夫と再会するとはいませんでした」
吉田は遺族にをげた。
しかし、許されることはなかった。
1996、田の遺骨は故郷の墓に埋葬された。
族と親族が集まり、葬儀がわれた。10ぶりの帰郷だった。
田の母親はすでにくなっていた。
だが妻と子どもたちは、ようやく父を送ることができた。
男は26歳になっていた。
娘は23歳になっていた。
2は父親のいないをきてきた。それでも、葬儀の、父の遺のでくをげた。
義弟の田も阪から来た。
田は墓で膝をつき、声を殺して泣いた。
10、疑われる線に耐え、自分でも義兄を守れなかったと責め続けてきた。今になって自分が犯ではなかったことは証されたが、失われたは戻らなかった。
「すみませんでした」
田は何度もそう言った。
「気づけなくて、守れなくて、すみませんでした」
田の妻は、田の肩にそっとを置いた。
俊にも、事件の真相は伝えられた。
警察が静岡県のさな寺を訪ね、吉田の自と数珠のことを説した。
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俊はい、何も言えなかった。
自分の部から数珠が発見され、10疑われていたことをった。
俊は田の葬儀には参列しなかった。
ただ、くの寺から祈りを捧げたという。
彼が事件、なぜあれほど苦しみながら礼拝を続けていたのか、周囲の々はになってし理解した。
自分もらないうちに、誰かの罪を着せられそうになっていた。
そのさを、彼は無識に背負っていたのかもしれなかった。
田の妻は、その、1で静かに暮らすことを選んだ。子どもたちはそれぞれのを歩み始めていた。
々、妻は夫の墓を訪れた。
「あの夜、怖かったでしょう」
墓でそう話しかけることがあった。
涙は流れた。
けれど、夫がどこにいるのか分からないまま待ち続けていた頃とは違った。
今は、尋ねてける所がある。
そのことだけが、彼女にとってさな慰めだった。
吉田の族もまた苦しんだ。
再婚した妻と幼い子どもたちは、夜にして世の非難を浴びた。事業は崩れ、々は彼らを避けた。妻は子どもたちを連れ、別の町へ移り、名を変えて静かに暮らし始めた。
野県のあの寺は、今も同じのにある。
参籠会も続けられている。
しかし、198510のあの夜の記憶は消えなかった。職は折、あのをいした。
もうしく気づいていれば。
もっとく話を聞いていれば。
そううこともあった。
だが、過ぎたは戻らなかった。
事件は10、1つの数珠によって真実へたどり着いた。
寺で消えた田誠は、偶然の論から命を落とし、犯の恐怖と保によっていに隠された。
そしてその罪は、無関係な僧侶へ向けられるよう仕組まれていた。
茶の製の数珠は、田が最までにつけていた切な品だった。
それは10、の暗に埋められていた。
しかし最には、あの夜の真実を語る唯の証となった。
― 完 ―