"生活費を奪って消えた母、20年後の再会で私が頼んだもの" 第15話
だけでいい
「私はね、今、確かめたかったんです」
私は静まり返ったテーブルで、言葉を紡ぎ続けました。
「というが経って、あなたがしでもあのの罪を悔いているのか。 私たちを捨てて奪ったおで、どれだけ幸せになったのか。 ……でも、違いましたね」
私は母のに置かれた、空っぽになった級料理の皿を見つめました。
「あなたはに入った瞬から、番い料理ばかりを選んで貪りい、昔の美談ばかりを並べてて、最まで娘にを払わせることしか考えていなかった。 何も変わっていない。あなたはと、何ひとつ変わっていなかった」
「美咲……私は……」 母の瞳に、うっすらと涙が滲み始めました。 けれど、それは反省の涙ではなく、追いつめられた者が流す保の涙であることを、私は見抜いていました。
「ごめんなさい……あのは若くて、愚かだったのよ……許してちょうだい……」 震える声で謝罪をにする母。
けれど、私のに、波は切ちませんでした。 謝られたところで、父が空腹に耐えて震えていた夜は消えません。 私が母のの作文用をにして流した涙も、度と戻ってはこないのです。
「許す必も、む必も、もう私にはありません」 私はバッグから財布を取りし、千円札を枚、テーブルのに置きました。
「おの席料として、千円置いておきます。
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お母さんが召しがった万千円は、ご自分で支払ってください」
母は絶望な目で伝票を見つめ、震えるでバッグから古い財布を取りしました。 からてきたのは、何枚かのクレジットカードと、わずかな千円札でした。 限度額ギリギリのカードで支払いを済ませる母のは、目に見えてガタガタと震えていました。
支払いを終え、ビルのへると、たい夜が吹き抜けていきました。 ネオンのが、母の老いた横顔を寒々しく照らししていました。
「……美咲。もう、度と会ってくれないの?」 母がすがるような目で見つめてきました。
私はち止まり、母の目を静かに見つめ返しました。
「ええ。もう度と会うことはありません」
「お父さんに……よろしく伝えてくれる?」
「いいえ、伝えません。父の穏やかな活を、あなたの名で汚したくありませんから」
私はそれだけを言い残すと、く礼し、度も振り返ることなく駅の改札へと歩きしました。 背から母が何かを叫ぶ声が聞こえたような気がしましたが、の入を告げるベルの音にかき消されていきました。
の呪縛が、完全に解けった瞬でした。
翌の夕暮れ。 私はいつものようにに乗り、父の暮らす郊のさなを訪れました。
ガラガラと引き戸をけると、台所から温かい汁のりがふわりと漂ってきました。
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「お父さん、ただいま」
「おお、美咲か。寒かっただろ、がれがれ」 エプロン姿の父が、満面の笑みで迎えてくれました。
居のちゃぶ台のには、湯気をてる肉じゃがと、綺麗に焼かれた卵焼き、そして根のお噌汁が並んでいました。 でをわせ、「いただきます」と箸を取りました。
「お父さん、肉じゃが、すごく美しいよ」
「そうか? し醂をしてみたんだよ。美咲、もっとべろ」 父は嬉しそうに目を細め、私のお椀にきなお肉をよそってくれました。
その温かな笑顔を見つめながら、私はので静かに呟きました。
あの夜、父が堂で選んだ「」は、が子をかすための、を削る無償のでした。 そして昨夜、私が選んだ「」は、奪われた歳を取り戻し、父とともにき抜いてきた自分を誇るための、確かな決別の証でした。
母のいない卓には、何気ない笑い声と、湯気と、あたたかな幸せが満ちていました。 私は父の淹れてくれた温かいお茶をすすりながら、穏やかに、く微笑みました。