"母ちゃんへの三千円" 第15話
の卵の(完結)
カチリ、とブレーカーががり、番旋盤のモーターがい回転音を響かせた。
吉雄は真しい軍を脱ぎ、素でハンドルのたい属の触を確かめた。
目のには、親方が置いていってくれた真鍮の丸棒が、チャックにしっかりと固定されている。
「いいか、吉雄。刃物を当てるは息を止めろ。鉄の声を聞くんだ」
背で見守る親方のい声がぶ。
吉雄は息を殺し、慎に送りハンドルをミリ単位で回した。
キリキリキリ……と鋭い音とともに、黄の真鍮の削り屑が、リボンのようにカールして元へい落ちる。
自分ので、鉄を削っている。
その確かな応えが、ハンドルを通して掌の骨までジンジンと伝わってきた。
あれから、季節はめぐり、昭のを迎えていた。
京のは、オリンピックの狂がったも、勢いを止めることなくり続けていた。ビルが建ち、が広がり、テレビや洗濯が庶民のにも次々と運び込まれていく。
その猛烈な代の底辺で、吉雄たち『の卵』と呼ばれた女たちは、文句つ言わずにと油にまみれ、本の台骨を支え続けていた。
休はに回の曜だけ。
朝から夜遅くまで働き、料の部分を故郷へ仕送りする活は、今の代から見れば過酷で理尽なものに見えるかもしれない。
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けれど、彼らの胸のには、決してに奪われることのない、確かな誇りと希望が燃え盛っていた。
働けば働くほど、世のが良くなっていく。
汗を流せば流すほど、故郷の族が笑顔になっていく。
自分の技術を磨けば磨くほど、誰もが認めるの男になれる——。
その純粋で真っ直ぐな信条が、昭というい代を駆け抜けた若者たちの、何よりの支えだったのだ。
午。の作業を終えるサイレンが鳴り響いた。
吉雄は番旋盤のスイッチを切り、ウエスで械の油汚れを丁寧に拭きげた。
削りがったばかりの真鍮のさなボルトをのひらに載せ、窓から差し込む夕にかざしてみる。狂いのない見事なネジが、茜のを浴びてキラキラと輝いていた。
「よし……来だ」
ポケットから取りした帳の余には、故郷の母からの最のが挟まれていた。
『吉雄、すっかり体も良くなって、畑仕事にていす。おが送ってくれたおで、留吉にしいランドセルを買ってやることができました。京の空に向かって、毎おの無事を祈っていす』
母の器用な文字を指先でなぞりながら、吉雄はさく微笑んだ。
「おい、吉雄! 銭湯くぞ! く片付けろ!」
表から耕平さんの威勢のいい声が響いた。
「はい! 今きます!」
吉雄は帳をポケットに仕い、鹸箱とぬぐいを抱えてへびした。
夕暮れの京の空には、番がぽつりと瞬いていた。
もまた、朝からが始まる。
油にまみれ、ゲンコツをらい、汗を流しながら、鉄の塊と向きう々が続いていく。
けれど、歳の吉雄の取りは、どこまでも力く、未来へ向かって真っ直ぐにを踏みしめていた。
昭。
名もなき無数の『の卵』たちが流した汗と涙のに、本の眩しいが、確かに築かれようとしていたのだった。