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"同窓会で「席はない」と笑われた私に、若女将が一礼" 第12話

川の朝と旧姓の署名

翌朝。

あいの温泉は、い川に包まれていた。え込んだ朝の空気の、松乃の玄関先には、チェックアウトを済ませた同級たちが集まっていた。

昨夜の宴会の余韻を残しながらも、その表にはどこか清々しいれやかさが漂っていた。

「ちゃん、本当にありがとう。お料理も温泉も最だったよ」 「体に気をつけてね。また必ず泊まりに来るから」

、またと、かつての級友たちがのを握り、笑顔でを振って宿をにしていった。

玄関のロータリーには、浩の運転するがまっていた。部座席には、すっかり旅の満をたたえた先が座っている。

窓が静かにき、先がを招きした。

「野さん。本当に、良い冥の産ができたよ。……来の賀状も、首をくして待っているからね」

「はい、先。必ずかせていただきます。お体、どうか切になさってくださいね」

がゆっくりときし、角を曲がって見えなくなるまで、は腰をく折って見送った。

やがて、ロビーの奥から、最にの女性が歩みてきた。

昨の派なのスーツではなく、な紺のカーディガンに着替えた麗子だった。化粧もくえられ、その佇まいには、どこか余分な虚飾が削ぎ落とされたような静けさがあった。

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麗子は玄関のがり框のでち止まると、に向き直り、何も言わずに、く、くをげた。

々としたその礼に、言葉以のいが込められていることを、は痛いほどじ取っていた。

もまた、両をで揃え、同じように静かにをげた。

麗子は顔をげると、さく微笑み、待たせていたタクシーへと乗り込んでいった。が葉のへと消えていくのを、はずっと見つめていた。

「お義母さん。今くらい、掃除は休んでくださいな。私がやりますから」

ろから、割烹着姿の苗が配そうに声をかけてきた。

「いいのよ、苗さん。これをしないとね、やっぱりが始まらないのよ」

は使い慣れたぼうきをに取り、いつものように畳へと歩みた。

サッ、サッ、とよい箒の音が、朝の澄んだ空気に溶けていく。

ふと、帳の格子窓を通りかかった、カウンターのに枚のいが置かれているのが目に入った。

昨夜の宴会の席で、同級たちがへ内緒でき遺していった寄せきだった。

『素らしいおもてなしをありがとう』 『自の同級です』 『来も、必ず松乃で会おう』

温かい言葉が隙なく並ぶの、番端の隅。

そこに、かつての教で見慣れた、あの几帳面で芯のい跡が、さく残されていた。

『幹事 佐伯麗子』

という現の姓ではなく、、共に机を並べていた頃の、懐かしい旧姓の署名だった。

はぼうきのを止め、のその文字を指先でそっと撫でた。

「……宗郎さん。今の同窓会、本当に、いい会だったわよ」

空を見げると、川のれた青空の向こうから、柔らかな朝のがり注ぎ、掃き清められたばかりの畳を黄に照らししていた。

言い返さなくても、誇らなくても、誠を尽くして用した席には、いつか必ず本当のが届く。

は胸の奥で静かに微笑みながら、今というしいを始めるために、再び力くほうきをかし始めたのだった。

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