"毎朝「出ていけ」と怒鳴る隣人、測量の日に顔色が変わった" 第12話
静かな朝
が来た。朝に窓をけても、沼さんの声は聞こえなくなった。
最初の頃は、計が分を指すと、自然に湯のみを持つが止まった。になれば、またから鳴り声が聞こえる気がした。けれど、聞こえるのは雀の声と、くをるの音だけだった。
ある朝、私は縁側でお茶をんでいた。柿のにはさな芽が始めている。毎朝、葉を拾わなければならないと文句を言われただ。今は、その枝の向こうに、やわらかなの差しが差していた。
そのの昼、玄関のチャイムが鳴った。てみると、若い夫婦と、さな男の子がっていた。夫婦は丁寧にをげた。
「初めまして。しず子さんのと、ゴンダさんのだったところを買わせていただきました。にを建てて、引っ越してくる予定です。そのは、改めてご挨拶に伺います」
「まあ、ご丁寧に。こちらこそ、よろしくお願いします」
男の子は、母親のろに隠れていた。夫婦によると、歳になるという。男の子は庭を見て、柿のを指さした。
「この、きいね」
「ええ。になると柿が実るのよ。引っ越してきたら、取りにおいで」
男の子は、母親のろからしだけ顔をし、うなずいた。夫婦は「ありがとうございます」と笑った。しいが建てば、この庭の隣に、またの暮らしが戻ってくる。
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彼らが帰ったあと、私は縁側に戻った。
「あなた、しいお隣さんが決まりましたよ」
仏壇の夫に話しかける。柿のを見て、あの子が気に入ったと言っていたこと。には、柿を取りに来てもらうつもりだということ。私は、誰かと約束をするように話した。
その晩、私はノートの最のページをいた。からき続けてきた記録の最に、今の付をいた。
「。しい隣が決まった。に、柿の実を取りに来る約束をした」
それだけいて、ノートを閉じた。
あのノートを、誰かをやり込めるためにいたわけではない。毎朝のことを忘れないため、自分の気持ちを確かめるためにいた。あの、机のに置かれたが、の境界と祖父の約束をらかにした。けれど、最に私を支えてくれたのは、ノートにいた言葉そのものより、自分がこのでどう暮らしたいのかを考え直したことだった。
私は、ここでまれ、夫を見送り、息子を育てた。誰かに言われたからといって、簡単に放すようなではない。それでも、やを守ることは、昔のまま何も変えないことではなかった。隣のを必なに渡し、しい族を迎える。それも、この所を切にする方法のつだとう。
翌朝、私はいつものに窓をけた。朝の空気が、台所に入ってくる。
湯のみを持つは、もう止まらない。
柿のの向こうには、まだ何も建っていないが広がっていた。になれば、そこにしいができる。さな男の子が柿を取りに来るかもしれない。私はそのをい浮かべながら、温かいお茶をにした。