"こぼされた定食の代償" 第10話
温かいご飯といつもの所
堂を包み込んだ沈黙を破ったのは、警察両のサイレンの音だった。
程なくして駆けつけた警察官たちによって、笹原、神崎、そしてミキのは、連されていった。
すれ違いざま、ミキは虚ろな目で私を見つめていたが、もはや言葉を発する気力すら残っていないようだった。自分の浅ましさと勝さが招いた、完全な自滅だった。
嵐のような騒がり、堂には再び常の静けさが戻ってきた。
計の針は半を回り、昼の営業はとっくに終わっていた。
「順子さん……本当に、社のお嬢さんだったんですか?」
厨の片付けをしながら、歩ちゃんがおずおずと尋ねてきた。
のパートさんたちも、どこか恐縮したような表でこちらを見ている。
私はわず苦笑して、角巾をしながらを振った。
「やめてよ歩ちゃん、そんな儀な顔しないで。父が創業者なのは事実だけど、私はただのイチ社員よ。経営は夫の史や役員のみんながしっかりやってくれているし、私には現で美しいご飯を作っている方がずっと性にっているの」
「でも……専務の奥様で、株主なんですよね? 厨で皿洗いなんてしなくてもいいのに……」
歩ちゃんの言葉に、私はカウンター越しに誰もいなくなった堂のテーブル席を見渡した。
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「私はね、この所が好きなのよ」
静かに、自分のにあるいを言葉にした。
「で汗を流して部品を作っているたちも、でをげて契約を取ってくる営業のたちも、みんなこの会社を支えてくれている事な族みたいなものじゃない。そのたちが、お昼休みに温かいご飯をべて、『午も頑張ろう』って笑顔になってくれる。その顔をここで見守るのが、私の何よりの誇りなの」
私の言葉を聞いて、歩ちゃんの瞳がじんわりと潤んだ。
「順子さん……やっぱり、最です! 私、順子さんについてきて本当によかった!」
「ありがとう、歩ちゃん。さあ、湿っぽい話はおしまい! 今のの掃除、入りにやらないとね。ピカピカにして、もみんなを気持ちよく迎えましょ!」
「はいっ!」
パートのみんなのるい笑い声が、厨いっぱいに響き渡った。
夕方、すべての業務を終えて更をると、本館の玄関で史が待っていてくれた。
「お疲れ様、順子。今は変だったね」
「あなたもお疲れ様でした。々といてくれて、本当に助かったわ」
で並んで、夕焼けに染まる駐を歩く。
神崎とミキが犯した正の全容は、週けの社内報と臨朝礼で正式に公表されることになった。神崎の転職話はすべて撤回となり、業界内にも悪評が広まって再就職のは完全に閉ざされたという。
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笹原も会社を解雇され、額の損害賠償を請求されることになった。
自らの欲のためにを踏みにじった者たちは、相応の報いを受けることになったのだ。
「の替わり定、何にするんだい?」
の助席に乗り込むと、史が優しく微笑みながら尋ねてきた。
「はね、作りのハンバーグよ。デミグラスソースをたっぷりかけて、みんなにモリモリべてもらうの」
「それは楽しみだ。は私も、番乗りで堂に並ぶよ」
「ふふっ、専務だからって贔屓はしないわよ。ちゃんと並んでね」
内に対等で温かい笑い声が広がる。
もまた、好きな厨にち、鍋のをつける。
真面目にきるたちの毎に、温かい杯の噌汁と、のこもったご飯を届けるために。
私はこれからも、この社員堂のカウンターで、笑顔でみんなを迎え続けるのだ。