みかん小説
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"昭和27年、戦争未亡人が開いた小さな店の50年" 第4話

たばこを売るには許がいる

調べてみて初めて分かったのだが、煙というものは、百の根のようにで仕入れてきて好きな所で勝に売っていい品物ではなかった。

本専売公社という国の組織が流通と製造をに握っており、町ので煙を売るためには、公社から厳格な「売」の指定許を取り付けなければならなかったのだ。

をきたい所から、番い既の煙までどれくらい距がれているか。

周辺にどれほどの世帯が暮らしており、通の数は分にあるか。

そして何より、申請者が本当に活に困窮しており、更と自のために権利を与えるにふさわしい物であるかどうか。

いくつもの分い壁がちはだかっていた。

けれど、女性の言っていた通り、戦没者遺族や、幼子を抱える戦争未が申請するに限り、優先に許枠を配分する救済措置がしていた。

「なんて、やったこともないくせにさ」

朝の茶のでをにすると、母はすり鉢で噌を擦りながら、あっけらかんと言い放った。

「最初から商売のやり方をってまれてくる赤ん坊がどこにいるんだい。棒をするわけじゃなし、軒先でできる商売なら、今のあんたには番の誂え向きじゃないか」

隣で麦飯を掻き込んでいた勇も、の話をざとく聞きつけた。

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「母ちゃん、うちでおやるの!?」

「まだ決まったわけじゃないよ」

「僕の好きなキャラメルも売る?」

「煙だから、甘いお菓子は置かないよ」

「えー、なんだ。煙なんて僕、吸えないからいらないや」

子どもの無邪気な落胆に、母とでわず吹きしてしまった。

数、私はをしたい実の軒先から、町内で番いたばこまでの距を測りにかけた。

規定の距を満たしていなければ、申請をしたところで払いをらうと聞いていたからだ。

巻き尺など持っていない。私は自分の靴の歩幅を物差し代わりにして歩いた。

歩、歩、歩、歩……。

途で向かいからやってきた顔見りに「おや、何を俯いて歩いてるの」と声をかけられ、数が分からなくなって最初の柱まで引き返した。

結局、同じを度も往復した。

その夜、勇の使わなくなった帳面の切れ端に歩数をき殴り、自分の歩幅を掛けて、まかな距を計算した。規定の距より、ほんのしだけれていた。

翌朝、私は勇のを引いて、駅の裏にある専売公社の張所へと向かった。

たいコンクリートの建物の奥、類のに囲まれた窓で、事務を着た職員が淡々と私の顔を見げた。

「売の申請ですね。所はこちらですか」

「はい」

「ご自宅のですか?」

「はい。に面した畳の部の壁を切り抜いて、窓を作りたいと考えております」

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「ふむ……隣に軒、すでに指定がありますが」

「はい、承しております。ですが、のでこれだけの距がございました」

私は夜、何度も計算し直したあの片をおずおずと差しした。

職員はきの恰好なメモを瞥し、ふっと元を緩めた。

「ご自分で歩いて測られたんですか」

「はい……巻き尺がございませんでしたので」

「なるほど。分かりました、こちらでも図面と現の測定をいます」

続いて、申請に必な類の覧を指示された。

世帯全員の戸籍謄本。

との所を証する登記簿の写し。

周辺の見取り図と、舗の設計見取図。

そして――職員が差しした覧の最のに目を落とした瞬、私の指先が直した。

『戦没者遺族であることを証する公類』。

「……あの、これも必なのでしょうか」

喉の奥がカラカラに渇き、掠れた声がた。

職員は鏡の奥の目を伏せ、事務に答えた。

「遺族の優先配分枠を適用するための審査です。確認が取れなければ、般の抽選枠に回ることになります」

「……分かりました」

に帰り着くと、私は真っ直ぐに鏡台のへ向かった。

番の引きしの奥。防虫剤の樟脳の匂いにまみれた、あの暗い底から、つ折りにされたを取りした。

、方から届いた夫の戦公報だった。

に取るのは、あの以来、本当に何ぶりのことだろう。

震える指先でをく。

見慣れた夫の名。

の。

聞き慣れないのジャングルの名。

文字を追うだけで、胸の奥底がキリキリと焼けるように痛んだ。

「母ちゃん、それなあに?」

背から、遊びから帰ってきた勇がを駆けがってきた。

私は慌てて公報を胸元に引き寄せ、背に隠した。

「何でもないよ、の事な類さ」

「ふーん……お父さんのやつ?」

勇は、父親の記憶を何ひとつ持っていない。居の鴨居に掲げられた、褪せた遺の軍姿しからないのだ。

「そうだよ。お父さんの類だよ」

「僕に見せてよ」

しだけ躊躇った、私は公報の代わりに、箪笥の箱にしまってあった枚の写真を取りした。

征、まだ戦争のがかった頃に、町の写真館でで撮った族写真だった。

勇は両で写真を抱え込み、いこと見つめていた。

「ねえ母ちゃん、僕ってお父さんに似てる?」

「そうだねえ……のと、笑ったの元がそっくりだよ」

「へえ、そうなんだ」

勇は誇らしそうにそう呟くと、写真を机に戻し、また友だちと遊ぶために元気に庭へ駆けしていった。

私は再び、膝のの戦公報を広げた。

ずっと見たくなかった。引きしの奥に封じ込めて、なかったことにしたかった。

けれど、私はこのを役所の窓へ差しさなければならない。

夫が異国のので息絶え、度と帰ってこないという酷なの証を、自らので差しすことと引き換えにしか、私と息子がこれからき抜くためのしいはかれないのだ。

翌朝、私は夫の遺に向かってさくをわせると、公報をの呂敷に包み、しっかりと胸に抱えてをた。

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