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"「祖母が危篤」と10万円を求めた夫の大嘘" 第22話

危篤じゃない声

次の航の、私たちは港へ見送りにった。は歳になって、言葉がずいぶん増えた。陸はを見つけると「パパのふね!」と叫び、すりへ駆け寄ろうとした。私はのをしっかり握り、幸が荷物を運ぶのを見ていた。、夫が祖母の危篤を実に万円を求めたのことが、い来事のようにえた。

幸は航、私へ封筒を渡した。には返済の細と、私の座へ振り込んだ額の覧が入っていた。「まだ全部じゃないけど、今分は払った」。私はそので額を確認し、「受け取りました」と答えた。夫はし笑い、「昔なら、そんな言い方されるとってたな」と言った。私は「昔なら、確認することさえできなかったからね」と返した。

子どもたちは父親へお産を頼み始めた。は「おおきいマグロ!」と言い、陸は「もっとおおきいの!」と両を広げた。幸は困ったように笑い、「に積めるかな」と答えた。私は「魚より、元気で帰ってきて」と言った。夫は真面目な顔でうなずき、を順番に抱きしめた。

松さんも見送りに来ていた。歳になっても背筋は伸び、にはいつもの根が本握られている。「あんた、今度は本当に働いて帰ってくるんだよ」と言うと、幸は「分かってるよ」と笑った。松さんは「私を勝に危篤にしたら、次は根百本抜かせるからね」

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と続けた。夫は肩をすくめ、「もう度としません」と答えた。

私はそのやり取りを見て、初めてし笑えた。あのは、祖母の元気な声を聞いてする方で、夫への信頼が崩れていく音を聞いたような気がした。今は松さんの声が、私たちのしい暮らしを見守ってくれている。けれど、笑えるようになったからといって、あののことを忘れたわけではない。

私の座へ戻った額は、まだ百万円には届いていない。夫の仕事も、が荒れれば予定どおりにはまない。それでも、遅れそうなときは先に連絡があり、必なことを相談できるようになった。私は『もう丈夫』と簡単には言わない。丈夫かどうかを毎確かめながら暮らせることが、今の私には何より切だった。

がゆっくり岸をれ始めた。幸は甲板からを振り、と陸も負けないくらいきく振り返した。私はのにち、夫の姿がさくなるまで見送った。帰宅したら洗濯物を畳み、の保育園の準備をして、末にはまた通帳を確認する。特別なことは何もないが、その普通の毎を私は自分で選んでいる。

帰り、松さんが「乃ちゃん、今度の休みに根を取りにおいで」と言った。私は「また畑で緒に抜いてもいいですか」と尋ねた。「もちろん。あんたには番いいところを残してあるよ」

。が「わたしも!」とをげ、陸も真似をした。私はを見て、わず声をして笑った。

そのの夜、松さんから話が来た。「無事にへ着いたかい。子どもたちは寝た?」と聞かれ、私は「はい。松さんはお疲れじゃないですか」と答えた。話の向こうで、あの張りのある声が響いた。「疲れるもんかい。も根を抜かなきゃならないんだから」。私は笑って「じゃあ、また」と言った。今度は、その声を疑わずに聞くことができた。

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