"義父の古希祝いで母娘の席が消えた――予約名義は私" 第10話
私たちが選ぶ卓
桜の季節が過ぎ、緑が眩しい初を迎えた頃。
私とは、職と学のにある、当たりの良いコンロ付きの賃貸マンションへ引っ越した。
私の経理の仕事は、試用期を経て正社員としての登用が決まり、活の基盤は完全に確されていた。も学になり、毎のように学での来事や、しく読んだ説のを楽しそうに話してくれる。
リビングの央には、引っ越しのにと緒に選んだ、無垢材の丸いダイニングテーブルが置かれている。
そこには、向かいうようにして、脚の子がきちんと並べられていた。
夕の片付けを終え、温かい緑茶を淹れてテーブルに座ると、部の奥からがひょっこりと顔をした。
「ママ、おじいちゃんから荷物が届いたよ」
玄関から運んできたダンボール箱をけると、には哲夫が丹精込めて育てた旬の無農薬野菜と、通のが入っていた。
には、哲夫の元気そうな況とともに、こんな節が添えられていた。
『ふみ子はあの以来、毎仏壇のでをわせ、自分の傲さを悔いているようだ。美も実をて、自分でアパートを借りて働き始めた。失ったもののきさに、ようやくとも気づいたのだろう。……いうちに、だけで美い蕎麦でもべにかないかい。
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もちろん、席は分、私が責任を持って予約するよ』
はそのを覗き込み、ふふっと柔らかく笑った。
「おじいちゃんのお蕎麦なら、ってもいいかな」
「そうね。お返事いておこうね」
私はのを撫でながら、ふと、のあののことをいしていた。
脚の子が然と並び、私との席だけが消されていた、あの豪奢な宴会。
『どこの馬の骨ともれない母娘にべる資格なんてない』と嘲笑った義妹。 淡に頷いた義母。 そして、スマートフォンを見つめたまま『で話そう』と目を逸らした夫。
あの、私が放ったたった文字の言葉。
『予約名義は私です』
あの言葉は、単に相をやり込めるための復讐の言葉ではなかった。
誰かの都の良い形としてきることを拒絶し、当な搾取と悪の鎖を自らので断ち切るための、宣戦布告だったのだ。
もしあの、私が泣き寝入りして会をっていたら。 もしあの、夫の言い訳を受け入れて、を美徳として耐え忍んでいたなら。
私たちは今も、の顔を窺い、誰かに与えられるわずかな席の温もりにすがりついて、魂をすり減らしながらきていただろう。
「ママ、何考えてるの?」
が向かいの席に座り、マグカップを両で包み込みながら首を傾げた。
「ううん。
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このテーブル、ちょうどいいねってって」
「うん! 丸いから、誰がどこに座っても同じだもんね」
の屈託のない笑顔が、リビングの柔らかな照に照らしされる。
族とは、血の繋がりによって自に与えられる特権ではない。 ましてや、誰かを排除して優越に浸るための具でもない。
互いの尊厳を認めい、痛みに寄り添い、守るべき瞬に迷わずを差し伸べること——その積みねの果てに、自分たちの志で選び取るものなのだ。
私たちはもう、誰かが施してくれる席を待つ側ではない。
私たちがからし、切にしたいたちのために、いつでも温かい子を用できる、自分たちだけの確かな卓をに入れたのだから。
夜がカーテンを優しく揺らし、の静かな灯りが、しいへのを穏やかに照らししていた。