"妹の手術前に「家族やめれば?」――私はドナーを辞退した" 第1話
用されなかった分
「なんで来たの? 族やめれば?」
個の引き戸をけた私に、妹の直美はそう言った。父と継母のには握りずしの盛りわせが並び、直美の皿にはきな老が載っていた。私の席だけには箸も湯呑みもない。員が数を確かめようとすると、継母の苗は私を指して「このはべませんから」と答えた。
個へ入る、私はので度ち止まっていた。父からの連絡には「術のに、みんなで事をしよう」とだけかれていたからだ。以の父なら私を呼びす理由を命令の言で済ませたはずだった。礼を言うという話が本当なら、族の最の記憶をしだけ違うものにできるかもしれない。私はそう期待した自分を、あとから責めたくなった。
員が追加の湯呑みを持って来ようとしたとき、苗はをげて止めた。「必ないって言ったでしょう」。員は私の顔を度見て、申し訳なさそうにをげた。らないが私のために気まずそうな顔をしているのに、族のは何もじていない。そのさな面が、父の言葉よりもはっきりと私に答えを示していた。
今夜の事会に私を呼んだのは父だった。妹の術に向けて尽力した私に、最に礼を言いたいという。半信半疑ながら指定された刻に来たのは、これを最に族との関係を終わらせるつもりだったからだ。
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私は入にったまま、父の顔を見た。
「お父さん。私を呼んだのは、あなたよね」
「ああ。だが、用は済んだだろう。直美の術の程も決まった。おももう族のふりをしなくていい」
父の藤堂正隆は、寿司をに運びながら平然と言った。継母は「お礼なんて言うわけないでしょう。これまで育ててやった分を返してもらっただけよ」と笑い、直美も箸を置かずに頷いた。彼女の頬は病気のせいで痩せていたが、を見ろすときの目だけは子供の頃と変わらなかった。
「だって、お姉ちゃんは私の引きて役だったじゃない。今度は体の部を分ける役。もうそれが終わったら、いるないでしょ」
私は鞄ので携帯話を握った。そこには移植医療チームのコーディネーターから届いた連絡先が保されている。術の予定が組まれていても、私のが最まで尊されると、医師は繰り返し説してくれた。族にはその話をしていない。
「私が来なければ、誰が費用をすつもりだったの?」
「もう病院には話が通ってる。も準備できたんだろう? だから、おがここにいる必はないって言ってるのよ」
継母の声はしも揺れなかった。父は員を呼び、私がっているのを無して追加の茶碗蒸しを頼んだ。私はその景を見て、りより先に議な静けさを覚えた。
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何もかけて消そうとしたの匂いが、このさな個には残っていた。
「分かった。今で終わりにする」
「やっと理解したのね。度と私たちのに現れないで」
私は引き戸を閉めた。廊を歩きながら病院へ話をかけると、夜窓の担当者が朝の連絡を配してくれた。をたところで、直美からいメッセージが届いた。《変なことしないでよ。もう術は決まってるんだから》。私は返事をせず、その画面を保した。
術に必なのは、父が払うつもりのでも、継母が頼んだ寿司でもない。私の体から提供される肺の部と、私自の自由な同だった。あのは、予定表に付がかれた瞬、私の気持ちまで自分たちのものになったとい込んでいる。
翌朝、病院へけば、私はそのい込みを終わらせられる。ただつ気にかかることがあった。父は昨夜、「類は全部そろっている」と言った。私がまだ署名していない最終確認の類まで、どうしてそろっていると言い切れたのだろう。