"「3月末に出ていけ」離婚を迫る夫が知らない真実" 第14話
あふれるページをめくって
梅がけ、抜けるような青空が広がったの週末。
の庭には、鮮やかな陽と、緑の々がききと葉を茂らせていた。 改修を終えたリビングは、吹き抜けからるい自然がたっぷりとり注ぎ、無垢のオーク材のがよいのりを放っている。
壁面に設えられた本棚には、世界各国の言語に翻訳された『ミセス・ローズ』シリーズの単本が美しく並べられていた。
「お母さん、たい緑茶が入ったわよ」
伊佐美が盆を持ってリビングのテラス席へると、そこには子に腰掛けた義父・信造が、目を細めて庭を眺めていた。
「ああ、ありがとう、伊佐美さん。……いいだね。このが、こんなにるく息を吹き返すとはわなかったよ」
信造はにした文庫本の表を優しく撫でた。
「あの愚かな息子がってから、私の胸のつかえもようやく取れた。君が私の娘になってくれて、本当に良かった。妻も葉ので、きっとんでいるよ」
「お父さんのおかげです。お父さんが背を押してくださらなかったら、私、今でもあのの言いなりになって、泣き寝入りしていたかもしれません」
「何を言うかね。を切り拓いたのは、君自の才能と、徹夜を守ろうとした母としての気概だよ」
信造が誇らしげに微笑んだその、玄関のドアが勢いよくき、元気な音が廊を駆けてきた。
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「ただいまー! 母さん、じいちゃん!」
テラスにび込んできたのは、のを迎えた徹夜だった。部活の宿から戻ってきたばかりの息子は、精悍に焼けし、の幼さを脱ぎ捨てて凛々しい若者へと成していた。
「徹夜、お帰りなさい。宿はどうだった?」
「バッチリ! それとね、母さん、模試の結果が返ってきたんだ」
徹夜はカバンから枚の成績表を取りし、し照れくさそうにテーブルのに広げた。 第志望の欄には『国学法学部』の文字があり、その横には最評価の判定がくっきりと印字されていた。
「すごいじゃない、徹夜! よく頑張ったわね!」
伊佐美が声を弾ませると、信造もを乗りして鏡の位置を直した。
「おお……! 素らしいな。法学部か。派な法律を目指すんだね」
「うん」
徹夜は真っ直ぐな瞳で、母親の顔を見つめた。
「母さんがさ、あの本をきながら、法律の条文を所懸命に調べてた姿を見てたから。力のないを言葉と識で守れる弁護士に、俺は絶対になるよ。……あ、でも学費は元親父の座から自引き落としされる公正証があるから、母さんの印税は円も使わせないけどね!」
気に笑う息子のを、伊佐美はおしそうに両で抱きしめた。
「ふふっ、頼もしいわね。でも、困ったはいつでもお母さんを頼りなさい。
そのために、お母さんはここでき続けているんだから」
の笑い声が、初の柔らかなに乗って庭の々へと溶けていった。
誰かに依し、誰かの顔を窺ってきる々は、もう度と戻ってこない。 自分のでを踏みしめ、性を磨き、する者を自らの腕で守り抜く。
テーブルのの原稿用に、よいペンの音が規則正しく刻まれ始めた。
り注ぐので、伊佐美は微笑みながら、希望に満ちた未来のたなを力くき綴っていった。