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"大正十四年、卒業式で制服を脱いだ三十七人――母の署名に隠された秘密" 第22話

の違う卒業

それからが過ぎた昭の、梓等女学ではしい卒業が式の準備をしていた。講堂のには、装を着た女も、袴姿の女もいた。学の案内には、式は希望者が購入または貸ししを選べると記されていた。必ず同じを着るという決まりは、もうなかった。

貸しし用のは何度も直され、初めの着すべてがきれいに残っているわけではない。袖をしい布に替えたものもあれば、丈を詰めて柄な徒用にしたものもある。傷んで貸せなくなったの代は、毎の修繕費の記録に残された。式を管理する々は、その数字を隠さなかった。

操は歳になっていた。志乃の教で腕を磨き、宮裁縫所では採寸と仕ての仕事を任され始めている。裁縫所の女たちが受ける仕事には、納期だけでなく、縫い直しの扱いや支払いの期もき添えられるようになった。すべてがい通りにいくわけではないが、言わなければ変わらなかったことがしずつ形になっていた。

そのの卒業式で、操は同窓会の仕事として貸ししのを届けに来た。講堂ではしい徒たちが鏡を囲み、袖を直したり襟をえたりしている。かつて自分たちがしたように、全員が斉にを脱ぐ面はもうない。

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それがし寂しいようで、何より嬉しかった。

「お姉さん、これは何ものですか」

の女がを指さした。操は裏に縫ったさな札を見せた。「最初に作ったと、直したがいてあるの。いま着るあなたにわせて、今も袖を直したところよ」。女は袖を撫で、「そうなんだ。私が着たも、次のが着るんですね」と言った。

操はうなずいた。「着たいがいればね。着ないもいるから、無理には勧めないわ」。女は鏡ので自分を見て、しばらく考えた、「私はこれを着てみたい」と笑った。操は袖のさを確かめ、釦をつ留め直した。

講堂のろには、もうを取ったの梶原が座っていた。のことをいしているのか、穏やかな顔で徒たちを見ている。佐伯も教壇へ戻り、輩たちを教えていた。操が挨拶すると、佐伯は「今はみんな、自分のを選んで来ましたよ」と教えてくれた。

式が終わると、操はちせと商を歩いた。母は以よりが遅くなったが、相変わらず仕事の話になると声が弾む。「枝さんがこの、修繕の仕事を件も取ってきたよ。はるさんも、代を決めるは必ず本を連れていくようになった」と笑った。

桐のを通ると、先には今の物のが並んでいた。操は、主と縫製所ので何度も話が止まったことをいした。

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誰かが悪かったと言い切れるほど、簡単な話ではなかった。それでも、いの者がいつも最に損をする約束は、しずつ変えられるのだとった。

「お母さん、私があの、式を脱いだこと、いまはどうう?」

ちせは歩みを止め、娘の顔を見た。「脱いだことだけなら、まだ叱りたいよ。あんなに懸命縫ったのに、何も相談してくれなかったからね」。操は苦笑した。母は続けた。「でも、脱いだに逃げずに考えたことは、よかったとうよ」。

はしばらく黙って歩いた。の向こうでは、卒業式帰りの女たちが笑いながらを渡っている。紺の、い着物、古い袴。も形も違うのに、その歩調は自然と揃っていた。

操は母と並んでへ向かった。自分の卒業式で着た茶の袴は、まだの箪笥にしまってある。いつかまた直して、別の誰かが着るかもしれない。操はその、縫い目の裏側にさな札をつけようとった。いつ作り、誰が直したのか。見えないところに残る仕事を、次のが確かめられるように。

のでのが吹いた。女たちはし先をき、誰としてろを振り返らなかった。それでいいのだと操はった。自分たちのしたことを、いつまでもいしてもらう必はない。次に歩く子どもが、どのを着るかでち止まらずに済むなら、それだけでよかった。

【創作について】

本作は正の方女学と仕て仕事を背景にしたフィクションです。物、学、商、来事は架空のものです。

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