"妻の事故と、五歳の娘が見抜いた嘘" 第20話
桜う並、だけの音
さらにが過ぎた、の初旬。 抜けるような青空の、名国学の赤レンガの正に、満の桜が咲き誇っていた。
『入学式』とかれた板の横で、真しいリクルートスーツにを包んだ(歳)が、スマートフォンを掲げて自撮りの角度を調していた。 「お父さん! くこっちに来てくださいです! 緒に撮るですよ!」
「はいはい、今くよ」 代半ばを迎え、髪がし混ざった介が、苦笑しながらりで駆け寄ってきた。 スーツの胸元をえ、娘の隣に並ぶ。 カシャリ、とシャッター音が響き、満の桜のびらがの肩のにふわりとい落ちた。
「に撮れたです! 見てください、お父さん!」 画面ののは、驚くほどよく似た目元で、満面の笑みを浮かべていた。 は法学部に学し、将来は庭環境に苦しむ子供たちを救う弁護士を目指すのだという。 あの、自らので理尽を打ち破った女は今、よりきな正義を抱いて、自らの未来へと羽ばたこうとしていた。
入学式を終えた午、はかつて暮らしていた町の、あの川沿いの桜並をゆっくりと歩いた。 数、歳だったのを引いて歩いた、あの散歩。 今はもう、の背丈は介の肩を優に越え、派なの女性として隣を歩いている。
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「お父さん、暮らしが始まったら、ちゃんと自炊するですよ?」 がし気そうに、横目で介を覗き込んできた。 「配するなよ。料理なら、おを育てげた実績があるんだから」 「ふふん、私の卵焼きのには勝てないくせに!」 は顔を見わせ、声をわせて笑いった。
ふと、がを止め、い散る桜のトンネルを見げた。 「お父さん」 「ん?」
「私ね、お母さんのこと……今はもう、んでないです」 の横顔は、の陽を浴びて、どこまでも澄み切っていた。 「あのお母さんがいたから、私は世界で番かっこいいお父さんの背を見ることができた。お父さんの優しさと、さをることができた。……だから、私、今の自分のが、すごく誇らしいです」
介は胸がいっぱいになり、そっとのにを置いた。 「……ありがとう、。お父さんも、おと会えて、おの父親になれて、本当に幸せだよ」
が吹き抜け、満の桜が斉に吹となって宙をった。 ピンクの絨毯が広がる並を、は再び並んで歩きす。
の嘘に惑わされることは、もう度とない。 誰かの勝な欲望に、尊厳を踏みにじられることもない。 互いを信じ、互いを支えい、歩歩踏みしめてきたの跡は、これからも途切れることなく、り輝く未来へと続いていく。
の柔らかな差しの、父と娘の確かな音が、どこまでも誇らしげに響き渡っていた。