"午前2時17分、亡き妻が病室を訪れる" 第15話
面会のない
病院には、面会がある。
午。
夕方。
規則。
受付。
名をく。
許を受ける。
族であっても、いつでも自由に会えるわけではない。
しかしのには、を決められない別れがある。
。
美佐子は午217分にくなった。
夫はそこにいなかった。
娘もいなかった。
とも彼女のもとへ戻ろうとしていた。
それでもにわなかった。
その分が。
父と娘のに残った。
織は父を責めた。
父は黙った。
娘を守るためだとった。
そのうち、自分が傷つかないための沈黙にもなった。
だからかかった。
もし由があの夜、黒いコートの女性を見なければ。
修は娘へ連絡しただろうか。
織は病院へ来ただろうか。
誰にも分からない。
すべて偶然だったという説もできる。
疲れた夜勤護師の見違い。
エレベーターの制御エラー。
写真を見たに記憶が似ているように変わっただけ。
修が妻の名を呼んだのも、終末期の識の変化だったのかもしれない。
どれも否定できない。
だが、由は今でもつだけはっきり覚えている。
最初の夜。
女性は病へ入らなかった。
ドアので修を見た。
由へをげた。
そして帰った。
回目。
織が病にいた。
女性は止まらず、そのままへ入った。
その違いだけは。
が経っても、由の記憶から消えなかった。
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に織は、母の黒いコートを実の押し入れから見つけた。
。
捨てられずに残っていた。
父が保管していたのだろう。
織は最初、処分しようとった。
しかしできなかった。
クリーニングへし、箱へ入れ直した。
着るつもりはない。
ただ、残しておこうとった。
父のと。
母の写真と緒に。
あるの命。
織はその箱をいた。
黒いコートに触れる。
そしてではなく。
病院で父と最に交わした会話をいした。
「お母さん、そんなに世話焼きだった?」
「おが番ってるだろ」
父の声。
し笑った顔。
以なら。
母の命には母の最期しかいせなかった。
父がくなったは、父の最期もなった。
けれど今は違う。
辺の写真。
族の卓。
父のくだらない冗談。
母の黒いコート。
喧嘩。
仲直り。
そういうものも、同じに戻ってくる。
午217分。
それはがくなった刻である。
だが織にとって、いつしか別のも持つようになった。
父と母が。
越しに。
自分をにしなかった刻。
病院の規則では。
面会は、とっくに終わっていた。
それでもあの夜。
誰かが。
確かに修の病を訪ねた。
受付にも名を残さず。
防犯カメラにも映らず。
ただ、エレベーターがいたという記録だけを残して。
午217分。
そしてその次の夜。
同じ刻に。
久世修は、待たせた妻の名を呼んで、静かに息を引き取った。