"妻のスマホに残っていた半年先の「2名様」" 第1話
半目のスマートフォン
妻の美がくなって、半が過ぎた。
仏壇の横にはまだ彼女が使っていた鏡が置かれ、洗面所の棚には半分ほど残った化粧がある。捨てようとえば捨てられる物ばかりなのに、私はどれにもをつけられなかった。物を片づけるたび、美がこのからもう度しずついなくなるような気がしたからだ。
でも、番困っていたのがスマートフォンだった。
毎の利用料は今も私の座から引き落とされている。契約者本がくなったの解約続きについては携帯話会社へ問いわせ、必な類まで揃えてあった。それなのに、舗へこうとすると、私は決まって別の用事をいしたふりをした。
「そろそろ解約した方がいいよ」
美の妹、織にも何度か言われた。
「分かってる」
そう答えながら、半経った。
私と美は結婚して21になる。子どもには恵まれなかったが、2ともそれをきな幸だとは考えなかった。私は宅設備会社で営業の仕事を続け、美は所の図館で週4働き、休みがえばでかけた。
美が病気になったのは、2だった。
最初は術をすれば落ち着くと言われ、私たちもそう信じた。治療が引いてからも、美は「来の桜はどこへ見にこう」「退院したらしい炊飯器を買おう」
広告
と、先の予定ばかりにした。私はそれにわせるように、「来はもっとくへこう」「炊飯器だけじゃなく蔵庫も替えるか」と答えていた。
くなる3週ほどまで、美自もへ帰るつもりでいたとう。
なくとも、私はそうっていた。
半目の命を過ぎた曜、私はようやくスマートフォンをに取った。解約するに、写真だけはパソコンへ移しておこうとったのだ。話番号や契約はなくなっても、写真まで消えるわけではないとでは分かっていたが、何かつ順を違えれば全部なくなるような気がして、今まで触れられなかった。
暗証番号はっていた。
私たちは互いの番号を隠していなかった。
画面がく。
最に使われていた壁は、2に所の川沿いで撮った桜だった。満というほどではなく、まだ枝がかなり見えている。美は満になるしの桜が好きで、「まだこれからってじがするから」とよく言っていた。
私は写真を1枚ずつパソコンへ移した。
所の桜。
病院の窓から見える夕方の空。
べかけの苺のケーキ。
薬局でもらった袋。
図館のに咲いた陽。
そして、私がソファでをけたまま寝ている写真。
「こんなの撮るなよ」
誰もいない部で、わず笑った。
声にして笑ったのは、ずいぶん久しぶりだった。
広告
写真のには、私がらない美のもあった。病院の売で買ったらしい雑誌、護師にもらった折りの鶴、織とべたさなプリン。どれも特別な写真ではないのに、画面を送る指が何度も止まった。
夕方になり、ようやくすべての写真を移し終えた。
私はスマートフォンを閉じようとした。
その、画面部にカレンダーの通が表示された。
《予定まで6》
何の予定だろうとった。
美がくなったも、病院の予約や薬をむなど、古い予定が通されることは何度かあった。それらは過の活の残骸のようで、見るたびに胸が痛んだ。
私は通をいた。
来週の曜。
19。
予定の名はつだけだった。
《ル・シエル》
聞いたことのない名だった。
半先まで残されていた、妻の予定。
私はその文字を見たまま、なぜかスマートフォンを閉じることができなかった。
---