"夫に4千円を頼んだら、4千万円振り込まれた" 第11話
おは、ただの具だ。
使うのが荒んでいれば凶器になり、恐怖に囚われればを孤させるたい檻になる。しかし、互いをいやる誠実さと結びついた、それは命を支え、未来の選択肢を広げる温かい盾となる。
「勇」
「ん?」
「この千円、どうしようか」
私は鞄のポチ袋に触れながら尋ねた。勇はし夜空を見げ、い息を吐きしながら笑った。
「お母さんが昔、俺に言ったんだ。『どうしても礼がしたいなら、いつか自分に余裕ができた、本当に困ってる誰かに回しな』ってさ」
勇は私の肩にそっとを回した。
「いつか俺たちに子どもがまれたり、あるいはで本当に困っている誰かに会った……この千円で、番美い飯をわせてやろう。そうやって、回していけばいい」
「うん……そうだね。私たちも、お母さんみたいにならなきゃね」
自宅のアパートが見えてきた。
観は相変わらず古びていて、玄関の引き戸はし建て付けが悪い。勇の乗る軽自は今で目を迎え、私のパートの料は以の半分だ。
座には、将来のためのきなおが眠っているけれど、私たちの暮らしは何も派にはなっていない。もやしを炒め、特売のパンを焼き、靴底を修理しながら、にをつけてきている。
けれど、私たちの世界からは、「おへの得体のれない恐怖」
と「孤独な沈猛」が完全に消えっていた。
「ねえ、勇」
玄関の鍵をけながら、私は夫を振り返った。
「の朝ごはん、ちょっとだけ贅沢して、商のパンさんで美しいいちごジャム買ってこようか」
「いいな。それ、番い角パンにたっぷり塗っておうぜ」
「ふふ、賛成」
え切った台所にかりが灯り、やかんの沸く温かい湯気がちり始める。
の卓のを、笑顔で語りえるが隣にいる。
杯のまかないが結んでくれた奇跡に抱かれながら、私たちのささやかで、かけがえのない常は、これからもずっと、この温かい所で続いていく。