"100人宴会を潰した義妹に、店主の私が請求書を出した日" 第11話
「キャンセル料は全額支払われました。契約の義務は果たされました。ですから、私とあなたがこれ以交わす言葉はありません。……お元気で」
ガラリと戸が閉まり、カチャリと施錠される音が響いた。
徹な拒絶。しかしそれは、相を憎悪で縛り付けるのではなく、のの責任を背負うことをきっぱりと断ち切る、自したの確な境界線だった。
戸の向こうで、リエがさくしゃくりげる声が聞こえ、やがて頼りない音がの向こうへとざかっていった。
が吹き抜ける。
「魚」の広には、ぶりに名の団体客が訪れていた。
元の堅械メーカー「田製作所」の創記祝賀会だった。かつて百分の朱膳がたく放置されていたあの座敷は今、会社役員や若い社員たちの笑顔と、歓のどよめきで満たされていた。
「いやあ、森川の女将さん! この目鯛の煮付け、絶品だねえ! 先代の親父さんのを完全に受け継いでるよ!」
髪の社が嫌でジョッキを掲げ、菜緒に向かって破顔した。
「ありがとうございます。今朝、浦の港から直接届いた極品でございます。どうぞゆくまでお召しがりください」
菜緒は々と礼し、際よく空いたグラスをげる仲居たちに線で図を送った。
この宴会を受けるにあたり、田製作所の総務部は切の異論なく、事の予約確認とキャンセルポリシーに署名捺印をしてくれていた。
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「りいだからこそ、商売の筋を通すのが礼儀だ」と言ってくれた社の言葉が、菜緒の胸を温かく満たしていた。
宴が最潮に達した午8過ぎ、帳の固定話が静かに鳴った。
菜緒が受話器を取ると、聞き覚えのある凛とした女性の声がに届いた。
「森川様、ご無汰しております。です」
同窓会の会計だった千佳からだった。
「さん、お久しぶりです。その節は本当にお世話になりました」
「いいえ、お礼を言うのは私の方です。……実は今夜、私の勤める信託の支で、昇祝賀会をくことになりまして。以お話しした通り、ぜひ『魚』さんでお世話になりたいとい、お話いたしました」
「まあ……ありがとうございます!」
「来の第曜、名で個を貸し切らせていただきたいのです。もちろん、事に確認の取り交わしに伺いますので」
「かしこまりました。最の魚をご用して、お待ち申しげております」
受話器を置いた菜緒は、帳の壁に掛けられた先代・繁蔵の遺を見げた。
父の写真は、誇らしげに目を細めて笑っているように見えた。
守り抜いたのだ。
理尽な悪に押し潰されることなく、内の甘えというに流されることもなく、自らのでしっかりとを踏みしめ、この簾と、料理としての尊厳を守り抜いた。
「女将! お造り、追加で皿入りました!」
「はい、ただいま!」
活気にあふれる厨へ向かって、菜緒は力く、凛とした声を響かせた。
引き戸の向こうには、夜のを々と照らす「魚」のしい簾が、初の夜を孕んで力くはためいていた。誰のも届かない、清廉で誇りきその板を掲げ、菜緒のはもまた、確かな歩みを刻み続けていく。