"娘の遺した手紙" 第5話
それでも、私は反論しなかった。
ここでを爆発させれば、賢治は自分が優位にったとう。私は拳を握り、夫の言葉を最まで録音させた。
「ほら、何も言い返せないだろ」
賢治は嘲笑した。
「おは俺がいなければ、ただのごみだ。今ここで座すれば、しくらい活費を恵んでやってもいいぞ」
真美も調子を取り戻し、私を見した。
「賢治さんは、もうすぐ世界な投資会社とのきな契約をまとめるんです。収だって何倍にもなるの。あなたとはむ世界が違うんですよ」
「世界な投資会社?」
私はわざと聞き返した。
賢治は得げに胸を張った。
「ノースブリッジ・キャピタルだ。200億円規模の再発事業で、俺が責任者になる。おには縁のない世界だ」
「そう。、その会議があるのね」
「ったところでどうにもできないだろ」
私は席をった。
「今、あなたが言ったことを忘れないで」
「忘れるものか。自分の惨めさを噛み締めろ」
賢治と真美の笑い声を背に、私は応接をた。
廊ではが待っていた。
「よろしかったのですか。あれほどの侮辱を、そのままにして」
「い所までがった方が、落ちたの痛みはきいわ」
私はエレベーターへ向かいながら答えた。
「の契約会議には、私も席します」
ノースブリッジ・キャピタル本事業の最資者が私であることを、賢治はまだらなかった。
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スカイガーデンタワーへ戻った私は、美緒の遺骨を抱いて窓辺に座った。
には無数のかりが広がっている。700億円の資産があっても、娘を取り戻すことはできない。その事実だけが、空っぽになった胸へく沈んでいた。
美緒は、私が資産のにまれたことをらなかった。
いつか成したら話そうとっていた。財産に縛られず、自分のやりたいことを見つけたで、将来の選択肢として渡すつもりだった。
けれど、そのは来なかった。
午8過ぎ、スマートフォンが鳴った。
表示されたのは、着信を拒否したはずの賢治の番号だった。別の回線から転送しているらしく、警告を無するように何度も鳴り続けた。
嫌な予がして応答する。
「何の用?」
『事なものを忘れていっただろ』
賢治の声には、ねっとりとした優越があった。
『美緒の宝箱だよ。ベッドの奥に隠してあった』
臓がきくねた。
美緒が病で描いた絵記や、私宛てのを入れていたさな箱だ。葬儀と追放の混乱で、持ちすことを忘れていた。
「返して。それは美緒がきた証なの」
『このにあるものは、全部俺のものだと言っただろ』
「あなたにとっても、娘の切な品でしょう?」
『を見たけど、くだらないものばかりだったぞ。お父さんとお母さんが仲良くなりますように、とかな』
息が止まりそうになった。
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美緒は、自分を疎んでいた父親のことまで配していた。その純粋な願いを、賢治は笑っている。
『庭にドラム缶をした』
「何をするつもり?」
『30分以内に来い。保険の受取を俺に戻し、会社の資料も全部渡すと約束しろ。そうしなければ、この箱を燃やす』
「やめて!」
『偉そうに命令するな。おには何の力もないんだ』
通話が切れた。
私はちがり、鞄を掴んだ。
罠だと分かっていた。今戻れば、宝箱を質に求をね、私を再び支配しようとするだろう。
それでも、美緒の文字や絵が燃やされるとうと、体がいてしまう。
「陽子様、お待ちください」
が入を塞いだ。
「今お1で向かうのは危険です。警察へ連絡しましょう」
「警察を待っていたら、燃やされるかもしれない」
「すでに所を伝え、器物損壊と脅迫の能性があると通報しました。警備担当者も向かっています」
「でも、美緒の箱が……」
へ力が抜け、私はそのに膝をついた。
700億円の資産を持っていても、今の私は娘のいを質に取られた、無力な母親でしかなかった。
は黙ってそばにっていた。
その、彼の携帯話へ通が届いた。画面を確認したの表が、瞬で険しくなる。
「陽子様、こちらをご覧ください」
探偵から送られてきた映像だった。
撮所は、賢治の自宅くにある極駐。
は昨夜で、暗い内に賢治と真美が乗っている。