"残飯の花嫁" 第3話
霞だけは、卓へ座ることを許されなかった。
族がべ終えた、残ったものをにするよう命じられた。初めの頃は、皿に残ったご飯やめたおかずだった。
それが徐々にひどくなった。
へ落ちた料理。賞期限の切れた品。最には、流しの角コーナーへ捨てられたものまで、霞のへ置かれた。
「嫁は残り物で分。べさせてもらえるだけ謝しなさい」
拒めば事はない。空腹に耐えかねて台所のパンをべると、盗と呼ばれ、翌はしか与えられなかった。
「孝志さんは何をしていたの?」
声が震えた。
霞の夫である孝志がらないはずはない。同じに暮らし、同じ卓を囲んでいたのだ。
「笑ってた」
霞は自分の腕を抱いた。
「母さんに逆らうからだって。のやり方を覚えれば、普通にべさせてもらえるって言ってた」
それだけではなかった。
義父の隆は、霞が呂へ入るを狙って脱所へ来た。鍵をつけてほしいと頼んでも、悦子は族に隠し事をするのかと鳴った。
ある夜には、霞が眠る部へ入り、布団のへ覆いかぶさってきた。
霞は必に突きばし、孝志に助けを求めた。
だが孝志は、父親が嫁を本当の娘のようにがっているだけだと言った。悦子に至っては、霞が義父を誘惑したと決めつけた。
「両親がいない女は、男に取り入る方法しからない」
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そう言って、霞の頬を何度も打った。
私は拳を握りしめた。
聞いているだけで吐き気がした。姉が半もそんな所で暮らしていたことも、その、私は幸せにしているとい込んでいたことも耐え難かった。
「どうして、もっとく教えてくれなかったの?」
わず責めるような声になった。
霞は子のでを縮めた。
「ごめんなさい。ごめんなさい」
「違う。お姉ちゃんが謝ることじゃない」
私は席をち、霞の肩を抱いた。
のに触れた瞬、霞が痛そうに息を止めた。袖をめくると、の腕にはの違う痣がいくつも残っていた。
しいものだけではない。
黄くれかけた痣のに、青黒い痕がなっていた。それが度きりの暴力ではないことはらかだった。
「昨、何があったの?」
霞はしばらく答えなかった。
やがて覚悟を決めたように、夜の来事を話し始めた。
義実には、親戚が10以集まっていた。霞は朝から料理と酒の用をさせられ、宴会が始まっても休むことを許されなかった。
酔った悦子が、親戚たちへ笑いながら言った。
「この嫁、残飯が好物なのよ」
流しからごみを持ってきて、皆のでべろと命じた。
霞が拒むと、悦子は髪を掴み、へ無理やり押し込んだ。吐きした霞を、孝志は「汚いものを見せるな」と殴った。
そのにいた親戚は、助けなかった。
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酔った勢いで笑い、携帯話を向ける者さえいた。
その異様な景ので、霞は初めて、自分はここにいたら命を失うとじた。勝の鍵がいていることに気づき、財布も着も持たずにびした。
を歩き、通りかかったに駅まで乗せてもらい、結婚から靴のへ隠していた額の現で最終列に乗ったという。
「解放されたい」
霞は私のを掴んだ。
「桃子と、おじいちゃんたちのところへ帰りたい。もうあのには戻りたくない」
「戻らなくていい」
私は迷わず答えた。
「絶対に戻さないから」
その、テーブルのに置かれた霞の携帯話が震えた。
画面には、孝志からの着信が表示されていた。
着信は100件を超えている。
メッセージ欄には、謝罪ではなく、命令と脅しが並んでいた。
〈今すぐ帰れ〉
〈母さんに恥をかかせやがって〉
〈逃げても無駄だ〉
〈おの居所なんか、俺の以にない〉
霞の顔から血の気が引いた。
私はその画面を見た瞬、りに任せて義実へ乗り込むのではなく、姉を確実に守るための準備が必だと悟った。
まず私は、霞の許を得て、体に残っている傷を撮した。
頬、腕、背、太腿。付が分かるよう、当の聞と計を緒に写し、全と患部の両方を記録した。
「病院へこう」
霞は怖がった。
事になれば祖父母へられてしまう。
警察へ連絡され、義実の々がるかもしれないと配していた。