"残飯の花嫁" 第2話
「桃子……ごめんね」
私は姉の体を抱き止めた。半ぶりに触れた肩は驚くほど細く、越しにも骨の形が分かるほどだった。
「謝らなくていい。に入って」
玄関の灯りので顔を見た、私はさらにい違を覚えた。霞の頬が赤く腫れ、元には乾いた血が残っていたのだ。
私は何が起きたのか尋ねたかった。
けれど霞は玄関のを何度も振り返り、体を震わせていた。今は問い詰めるより、ここが全だと分からせることが先だった。
すべての鍵を閉め、カーテンを引く。霞をソファへ座らせると、私は毛布を肩へかけ、温かい茶を用した。
両でカップを包んだ霞は、湯気を見つめたまま何も話さなかった。
「孝志さんと喧嘩したの?」
できるだけ穏やかに尋ねると、霞の肩がねた。
「ちょっとだけ……言い争いになって」
力なく笑おうとしたが、腫れた頬が痛むのか、すぐに顔を歪めた。
らかに、ただの夫婦喧嘩ではない。
それでも霞のから真実を話す準備ができていないのなら、無理に聞きすべきではないとった。
「今は休んで。話はでいいから」
姉が以使っていた部には、寝具も着替えも残っていた。浴へ案内すると、霞は鍵がかかるかを何度も確認した。
そのが、胸に引っかかった。
夜、私は眠ることができなかった。
隣の部から、声を押し殺して泣く霞の声が聞こえていたからだ。
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助けにこうとして何度も布団から起きがり、それでも今は1にした方がよいのかもしれないと迷った。
やがて泣き声が止み、部は静かになった。
しかし、その静けさの向こうに、私たちの像を超える半が隠されていることを、私はすでにじ取っていた。
翌朝、まだ6だというのに、霞はリビングにいた。
ソファの端へ背筋を伸ばして座り、落ち着かない様子で計を見ている。私が声をかけると、叱られるとったのか、慌ててちがった。
「ごめん。朝ごはん、作るね」
「いいから座っていて。お姉ちゃんはお客さんじゃないでしょう」
霞は困ったようにち尽くした。
「でも、何もしないでいるとられるから」
誰にられるのかと聞きかけ、私は言葉をみ込んだ。
台所でご飯を温め、噌汁と卵焼き、蔵庫にあった漬物を並べる。簡単な朝だったが、霞は料理を見た瞬に目を見いた。
「これ、べてもいいの?」
「もちろん。お代わりもあるよ」
箸を持った姉は、最初のを恐る恐るへ運んだ。温かい噌汁をむと、堪えていたものが崩れたように涙を流した。
「おいしい……」
それから霞は、でべ始めた。
くへ入れなければ取りげられるとっているようなべ方だった。私は胸騒ぎを覚え、ゆっくりでいいと何度も声をかけた。
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卵焼きを半分べたところで、霞のが止まった。
「残しても、捨てないでくれる?」
「どういう?」
霞は俯き、震える指で箸を握りしめた。
「私、この何かか……まともな事をさせてもらってなかったの」
声はあまりにもさく、初めは聞き違いかとった。
「孝志さんが活費を渡してくれなかったの?」
霞は首を横に振った。
結婚、2は居として借りていたマンションで暮らす予定だった。ところが婚姻届をした直、孝志は何の相談もなく実との同居を決めたという。
「母さんの腰が悪くなったから、しばらく事を伝ってほしい」
最初は数週だと説された。
だが義実へ着くと、霞の荷物は夫婦の寝ではなく、廊の奥にある物置同然の部へ運ばれた。孝志は母親の指示に従い、当たりのように以の自で暮らし始めた。
翌朝5、義母の悦子が部へ入ってきた。
「嫁が姑より遅く起きるなんて、どんな育ち方をしたの?」
布団を剝ぎ取り、霞を台所へたせた。
それから毎、広いの掃除、4分の洗濯、畑の伝い、義父母の事作りを命じられた。の廊にわずかな埃が残っているだけで、悦子は霞のや背を布団叩きで打った。
「両親がいないから、しつけがなっていない」
何度も同じ言葉を浴びせられた。
霞が作った料理は、見すらせずに「まずい」
と流しへ捨てられた。その方で、同じ料理を悦子が作ったものとして卓へすと、族はおいしいと言って平らげた。