"トウモロコシ畑に消えた母" 第8話
「紀子に全部話す。健を信じてはいけない」
芳子の字でかれたページだった。
健本は自宅にいなかった。午の便で国へるため、成田空港へ向かっていた。
国続きの直、搭乗付で待していた捜査員が健を取り囲んだ。松田は正面へち、逮捕状を示した。
「健。佐藤芳子さんに対する殺と体遺棄、証拠隠滅の容疑で逮捕する」
健は最初、驚いた様子を見せなかった。
「15の事件ですよ。今さら、何を根拠に」
「あなたが落とした注射器の部品と、あなたが作らせた偽のアリバイです」
鈴の名をすと、健の表が初めて変わった。
「鈴が何を言った」
「その質問は、取調で聞きます」
錠をかけられた健は、周囲の線を識して姿勢を正そうとした。、からどう見えるかを支配してきた男は、最まで堂々とした経営者を演じようとしていた。
しかし、搭乗券を持つは震えていた。
取り調べで健は完全黙秘を続けた。弁護側は、古い証拠の保管状態やDNAの汚染能性を指摘し、佐々と鈴の証言は罪を軽くするための虚偽だと主張した。
裁判は期化した。
検察は、証拠品の保管記録を詳細に示し、プラスチック片が事件直から封印され、再鑑定まで適切に保管されていたことを証した。、薬物、洗浄剤という複数の成分が同じ部品から見つかった点も、からの汚染では説できなかった。
広告
鈴は証言台で、事件当夜の代わりについて語った。
「社のスーツを着て、携帯話を持ち、個にいろと言われました。員に顔を見られないよう、照を落としていました」
「被告がどこへくかっていましたか?」
「野へくとだけ聞きました」
「戻ってきたの様子は?」
「袖にがついていました。さな傷もあった。私が何をしたのか聞くと、社は『族の問題を終わらせた』と言いました」
佐々の音声も法廷で再された。
眠らせるだけ。に残るものは全部処分する。朝には、誰も内を疑わない形にする。
傍聴席には、芳子の親戚とたちが座っていた。15、健の涙を信じ、彼を支えてきたたちだった。
健は音声が流れても顔をげなかった。
紀子のカセットテープが再されただけ、わずかに目を閉じた。
「聞かない方がいい。君まで、お母さんと同じ違いをすることになる」
それは、妻を守る言葉ではなかった。
真実へづけば、母親と同じ目に遭うという脅しだった。
裁判所は、健が額の負債を解消し、芳子のを支配する目で犯を計画したと認定した。本のクラブに代わりを置き、薬物で抵抗できない状態にしたうえで命を奪い、部犯による異常な事件へ見せかけた為は、極めて計画で悪質だと判断された。
広告
芳子を全裸にした理由も、法廷で確にされた。
性な目ではない。
に付着した健の皮膚片や繊維、薬物、内の痕跡をまとめて消し、の関を被害者の私活へ向けるためだった。
健は、芳子がくなったにどんな噂をてられるかまで利用した。被害者が説できないことをったうえで、尊厳を奪う形へ現を作り替えたのである。
さらに裁判では、紀子に対する期な精神支配も詳しく述べられた。
健は、妻の交友関係と銭を管理し、母親のに対する罪悪を繰り返し植えつけた。処方の鎮静薬を与え、判断力をさせ、自分の説だけを信じる状態へ追い込んだ。
紀子のについて、殺としての故を直接認定するには証拠がりなかった。しかし、彼女が健から刻な理虐待を受けていたことは、医療記録、録音、友や親族の証言から認められた。
判決の、裁判は健へ向けて言った。
「被告は、被害者の財産だけでなく、族の判断、記憶、周囲からの評価まで支配しようとした。犯も遺族を装い、被害者の尊厳を期傷つけ続けた責任は極めてい」
健には無期懲役が言い渡された。
判決を聞いても、彼はを表にさなかった。ただ退廷する直、傍聴席のたちを度だけ見た。
かつて自分を完璧な婿と呼び、涙を流して支えてくれたたちが、誰1として彼の目を見返さなかった。