"トウモロコシ畑に消えた母" 第4話
松田は本のクラブを再び訪れた。
従業員によれば、個にいた男は健と同じ濃紺のスーツを着ていた。顔は暗くてよく見えなかったが、健が普段使っている腕計をつけ、彼の携帯話で何度か通話していたという。
「声を聞きましたか?」
「声で話していました。でも、あのお客様はいつも静かな方なので」
「部から1度もなかった?」
「なくとも私たちが見た限りでは」
個には専用の非常があり、建物裏側のへ通じていた。警報装置はなく、客が従業員にられずへることも能だった。
しかし、健のは駐へ残されていた。幹線の最終便はすでに終わっており、別のを用した記録もない。
松田はクラブ周辺の防犯カメラを確認したが、1999当の映像は粗く、非常からた物の顔やのナンバーを判別できなかった。
午005分頃、黒いセダンが裏からていく映像だけが残っていた。午510分には、似たが同じへ戻っている。
京から青沢まで、速を法定速度でれば片3くかかる。往復5では余裕がないが、途で速度をげれば能ではなかった。
料所の通記録には、該当する黒いセダンが複数台あった。ナンバーの記録は部しか残っておらず、健との関係を示すものは見つからない。
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松田はクラブにいた男が代わりではないかと疑った。
健には鈴隆という専属運転がいた。齢も体格も健にく、普段から彼のや携帯話を管理していた。
鈴へ事を聞くと、事件当夜は自宅にいたと答えた。妻も同じ証言をした。
「社のスーツを着て、クラブの個にいたのでは?」
松田が尋ねても、鈴は笑った。
「刑事さん、映画の見すぎですよ」
証拠はなかった。
事件から半、専従捜査班は縮された。資料は未解決事件の保管庫へ移され、松田も別の部署へ異になった。
健は芳子のを相続した紀子へ、相続税と会社の資繰りを理由に担保設定を求めた。母を失い、判断力を失っていた紀子は、夫に言われるまま類へ印を押した。
畑は健の会社の借を支える担保になった。
芳子が守ろうとしたも、娘のも、しずつ健の支配へ入っていった。
母の事件、紀子は夜になると眠れなくなった。目を閉じると、畑に横たわる母の姿を像し、午3頃に息苦しさで目を覚ました。
健はでは献な夫を演じた。病院へ付き添い、薬を管理し、や親戚に対して「紀子は今も母親のからち直れない」と説した。
のでは、まったく違う言葉を使った。
「おがもっと母親を気にかけていれば、あの朝1で畑へかせずに済んだ」
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「お母さんは毎朝1でっていたわ。私が止められることじゃない」
「でも、事件のに話をしたんだろう。何か変わった様子に気づかなかったのか」
「普通だった」
「おは自分の母親の異変にも気づけなかったのか」
同じ言葉が、何度も繰り返された。
紀子が反論すると、健は数を利かなくなった。事を用してもをつけず、寝にも入れない。
最には紀子の方から謝った。
「私が悪かった。もうらないで」
健は妻のを撫で、優しく抱きしめた。
「分かればいい。おには俺しかいないんだから」
紀子は次第に、母のは自分のせいだったとうようになった。友からの話へなくなり、親戚が訪ねてきても体調を理由に会わなかった。
健は紀子の通院先を変え、医師へ「妻は被害妄がく、母親を殺した犯がにいるとい込むことがある」と説した。
処方された薬も健が管理し、そのの気分や体調を見ながら妻へ渡した。紀子は何をどれだけんでいるのか、正確に把握できなくなっていた。
2002の、紀子は母の古い帳を見つけた。事件のページには、い文章が残されていた。
「健のことを、紀子に話す。会社の借、薬、。証拠は農協の庫」
紀子は帳を握りしめ、健の帰宅を待った。
「お母さんは、あなたのことを警戒していた」
健は帳を読むと、しそうな表を浮かべた。
「病気だったんだよ」