"嫌われた娘の五十八億円" 第7話
俺はおのを円たりとも汚させない。
奴らを網打尽にするそのまで、俺はこのを命を懸けて守り抜く』
真はノートを両で抱きしめ、声を押し殺して震えた。
自分は「親に捨てられたれな娘」などではなかった。
父は、社会の暴力と欲な兄弟たちから真の才能を守り抜くため、自ら悪魔のに潜り、もの、世界企業と渡りって数億円もの富を真のために築きげていたのだ。
記の半は、老いた父・源蔵の肉体が病魔に蝕まれ、自らのをカウントダウンしながら仕掛けた、命がけの「完全包囲網」の記録となっていた。
『令()
精密検査の結果、末期の肺がんで余命半と宣告された。
ついにタイムリミットが来た。
だが、準備はすべてった。
過にわたり収集した、黒崎興業の武器密輸・マネーロンダリングの全証拠、政治への贈賄リスト、そして修と慎が会社資から着した億千万円の裏座の全データを、桐弁護士と京検特捜部の直通ホットラインへ預託した。
俺が息を引き取った瞬、特捜部と警庁組織犯罪対策部が斉にく筈になっている。
そして、公正証遺言を作成した。
精の全株式、の建物、スイス座の全権利を真に単独相続させる。
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修と慎には、遺留分として『精が黒崎グループから背負わされた千万円の簿連帯保証債務』のみを相続させる。
あいつらが遺留分を主張して裁判を起こせば起こすほど、暴力団の借を自分たちで背負い込み、さらに特捜部に横領と組織犯罪処罰法違反で逮捕されるという、逃げのないネズミ捕りだ。
悪魔に魂を売った息子たちへの、これが父親としての最の落としだ』
そして、記の最のページ。
付は、源蔵がくなるのものだった。
『令
体がもうかない。指先が鉛のようにい。
今、真が仕事を終えて病院へ駆けつけてくれた。
あいつは自分の袋をし、え切った俺のを、温かい蒸しタオルで何度も何度も拭いてくれた。
「お父さん、痛むところはない? 寒くない?」
涙を浮かべながら、あいつは俺の顔を覗き込んできた。
抱きしめたかった。
「真、すまなかった。おを度も抱きしめてやれなくてすまなかった。おは俺の最の娘だ、世界で番している」と、叫びたかった。
だが――病のドアの曇りガラスの向こうに、修が雇った見張りの男のが見えていた。
もしここで俺が真にを見せれば、奴らは遺言のを察し、真に危害を加えるかもしれない。
あと数のだ。
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俺は真のをい切り払い、顔を背けた。
真のすすり泣く声が聞こえ、やがて病のドアが静かに閉まった。
あいつがてった、俺はシーツのに残った真の温かい涙の跡を、かないで何度も、何度もなぞった。
真。おの温もりを、俺は国へ持っていく。
、おの父親でいさせてくれてありがとう。
おをすることができた俺のは、何つ悔いのない、最に幸せなだった。
さようなら、真。
く、気く、おの信じるのを歩め』
記はそこで完全に途切れていた。
万のインクの跡に、きな乾いた涙の染みがになっていた。
真はノートを胸にく押し当て、畳に額を擦りつけて慟哭した。
「お父さん……! お父さん……!! うわああああっ!」
静まり返った団のに、押し殺してきた真の叫びが響き渡った。
酷な父親など、どこにもいなかった。
誰よりも器用で、誰よりも苛烈に、する娘の未来のためだけにの獄をたったで耐え抜いた、気き戦士がそこにいたのだ。
真は涙を拭い、ちがった。
計の針は午を指し、の空がみ始めていた。
真の瞳には、かつての怯えやしみは欠片も残っていなかった。父から託された億円の真実と、ののみ。
それを受け止めた真の胸には、どんな嵐にも揺るがない、鋼の覚悟が宿っていた。
「お父さん。私、ってくるね」