"捨てられた妻の逆転相続" 第7話
恵子は静かにその報告を受け取り、く呼吸置いた。
「そうですか……」
彼らが自らの愚かさを悔い、自らの罪のさを背負ってきていくこと。それが、静が最にした裁きの本質であり、彼らに残された唯の更のだった。
恵子は報告をデスクの引きしに仕い、庭へと続くガラス扉をけた。
たくも清々しいのが、恵子の頬を優しく撫でていく。
、暗い部で義母の命を支え続けた々は、決して無駄な苦痛などではなかった。の痛みに寄り添い、誠実にきることの尊さを、静はその命を賭して恵子に教え、そして託してくれたのだ。
『恵子さん、ありがとう。加納を、よろしく頼みますね』
あの、静が最に遺してくれた言葉が、に乗って元を掠めたような気がした。
「お義母様。私、この所で、もっとたくさんのたちの力になっていきます」
恵子は青く澄み渡る空を見げ、凛とした取りで、あふれる庭園へと歩みしていった。その背には、自らの志で未来を切り拓くの、確かなさと誇りが満ちていた。
の寒さが段と厳しさを増したの夕暮れ。
関の業団にある物流センターの片隅で、翔太は息をく吐きしながら、い段ボール箱をトラックの荷台へと積み込んでいた。
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かつて入れのき届いていた爪は割れ、指先はあかぎれで赤黒く腫れがっている。ブランド物のスーツと革靴をに纏い、本のオフィスで部に指示をばしていた頃の面は、作業着と全靴に覆われた今の彼には欠片も残っていなかった。
「おーい、加納! 次のコンテナ、番ドックに到着したぞ! をかせ!」
荒々しい現監督の号が響く。
「はいっ! すぐきます!」
翔太は腰の痛みを堪えながら、必に声を張りげて駆けした。
あの表彰式のロビーで、母・恵子から遺留分の清算類を渡され、完全に突き放されたあの。翔太は夜のを彷徨い、自暴自棄になって自らの命を絶つことすら考えた。
だが、恵子のあの澄み切った、切の甘えを許さない差しが、翔太の胸にく突き刺さっていた。
『親だからといって、の尊厳を踏みにじったの責任を肩代わりすることはできません。今のあなたに必なのは、自分の犯した過ちを認め、自分のでからを啜ってき直すことです』
母の言葉は、酷な断絶ではなく、としてき直すための唯の処方箋だったのだと、極限の肉体労働ので翔太はしずつ理解し始めていた。
汗と埃にまみれ、自分の力だけで稼いだ万円札のみ。
誰かに用されたではなく、自分自の労働で得るの終わりの温かい缶コーヒーの。
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「母さん……俺、逃げないよ。絶対に、自分のでてるようになるまで」
翔太は袖で額の汗を拭い、目ののい荷物に再び両をかけた。
方、さらにの寂れた港町にある古びたアパートの畳で、俊はさな油ストーブのを見つめていた。
夜勤の警備の仕事を終え、骨の軋むような体を引きずって帰宅した部は、芯までえ切っていた。
テーブルのには、コンビニで買った半額の惣菜パンと、が入ったコップが置かれている。
俊は壁に掛かったさなカレンダーを見げた。
今は、母・静の周忌にあたるだった。
かつての俊なら、格式い寺で親族や政財界の鎮を招き、豪華な会席料理を用して自らの権勢を誇示していただろう。だが今、母を悼むために彼の元にあるのは、百円均で買ったさな線と、埃をかぶったマッチ箱だけだった。
俊は震えるでマッチを擦り、本の線にを灯した。
ちる細い煙を見つめていると、に、の記憶が鮮に蘇ってきた。
婚の頃、まだ父がきていて、母の静も元気に敷を切り盛りしていた頃。
恵子が初めて加納に嫁いできた、緊張で固くなっていた彼女のを、母の静は優しく握りしめてこう言ったのだ。
『恵子さん、ようこそ加納へ。
このはしきたりがくて変かもしれないけれど、何かあったらいつでも私を頼りなさいね。