"捨てられた妻の逆転相続" 第5話
庭の々のから差し込む眩しい漏れが、恵子のしいの第歩を、温かく照らししていた。
方都の片隅にある築の造アパートで、俊はえ切った畳のに寝転がっていた。
窓のからは、容赦のないたいの音が響いている。いカーテンの隙から差し込むは鈍く、部の隅にはコンビニエンスストアの弁当容器や、みかけのいパック酒が散乱していた。
かつて本の広な敷で、質なシルクのパジャマにを包み、朝になれば恵子が完璧な温度で淹れた緑茶を当然のようにんでいた々は、まるでい世の来事のようだった。
「痛っ……」
起きがろうとした瞬、腰に鋭い激痛がった。
歳を過ぎてから始めた警備員の夜勤。のち仕事と夜の気は、これまで肉体労働など度も経験したことのない俊の体を容赦なく蝕んでいた。
ちがることすらままならず、にいつくばりながら、俊は壁にをかけた。その線の先に、枚の茶封筒のコピーが落ちている。あの、敷をされる直に条弁護士から渡された、母・静の遺言と介護誌の控えだった。
俊はうようにしてその片を繰り寄せ、震える指で誌の頁をめくった。
『○○。
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お義母様、本は朝から微あり。背をさすりながらお好きな美空ひばりの曲を流すと、し表がらぐ。夜に痰が詰まりかけたため、吸引処置。俊さんは本も接待とのことで帰宅は午。起こさぬよう、静かに病を続ける』
『○○。お義母様のお肌が乾燥してきたため、特製の保湿クリームで全をマッサージ。俊さんに「お母さんのがしくようになったのよ」と伝えたが、「そうか、飯はまだか」とだけ返答。お義母様は寂しそうに目を伏せておられた。私がもっと寄り添わなければ』
淡々と、しかし溢れんばかりの慈しみをもって綴られた恵子の文字。
、千百。
俊がで傲に振るい、母を「との源泉」としてしか見ず、妻を「無の政婦」と蔑んでいた、恵子はこのたい現実とで向きい、母の命と尊厳を守り続けていたのだ。
「俺は……俺は本当に、何つ見ていなかったのか……」
俊の目から、いものが溢れした。
自分が信じていた「加納の威」も「名の誇り」も、すべて母の財産と妻の献という固な台のに築かれた虚飾に過ぎなかった。台を自らので破壊した今、残されたのは、誰からも必とされないれな老の残骸だけだった。
その、俊の古いスマートフォンがく震えた。
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画面には、滅に連絡をしてこない息子の翔太からのメッセージが表示されていた。
『父さん、を面できないか? 方支社でも成績が最位で、今の賃が払えない。母さんに連絡を取る方法はないのか?』
俊は力なく首を振った。息子もまた、自分と同じように「与えられること」しからずに育ち、今その報いを受けていた。
俊は返信を打つ気力すら湧かず、ただスマートフォンの画面を伏せ、暗い部の隅で膝を抱えて咽び泣いた。
枯らしが吹き抜けるの午。
都内のとあるホテルのメインホールでは、京都主催の「域福祉および先宅ケア事業表彰式」が華やかに執りわれていた。
壇にがったのは、加納恵子だった。
濃紺の品なアンサンブルスーツにを包んだ彼女の姿は、かつて敷の奥で割烹着を着ていた頃とは見違えるほど凛としており、会に集まった数百の福祉関係者や政関係者から惜しみない拍が送られていた。
加納の旧本邸を改装してちげた「静メモリアルケアセンター」は、医療・介護・域コミュニティを融させた画期な施設として、業からわずか半できな注目を集めていた。
「この賞をいただくにあたり、私を信じ、この所を託してくださったき母・加納静と、現で共に汗を流してくれるスタッフの皆様により謝申しげます」
恵子の澄んだ声がマイクを通してホールに響き渡る。