"最後の定期券" 第4話
「これは、私も今まで渡せなかった」
封筒には。
父の名がかれていた。
「お父さんが、昔から持っていたもの」
由紀がける。
には。
枚のが入っていた。
宛名は。
佐伯優子。
そして最の文。
そこにはこうかれていた。
「30経っても、約束を忘れていません」
由紀は震えるでを握った。
父は。
今でも。
その女を待っていた。
そして。
父が消えた理由は。
そこにかれているのかもしれなかった。
父が残したを読んだ翌朝、由紀はほとんど眠れなかった。
何度読み返しても、そこにかれている内容は変わらない。30、父はの女と約束をした。そして、その約束を果たせないまま、30といういを過ごしてきた。
由紀にとって父は、いつも族のために働くだった。
朝く起きて仕事へく。
帰宅すれば疲れた顔で夕をべる。
休には庭の入れをする。
困ったことがあれば黙って解決する。
それが父だった。
だからこそ、信じられなかった。
父ののに、自分たち族がらないきな来事があったことを。
しかも、その来事は30経った今も、父ののに残り続けていた。
「お母さん」
朝の席で、由紀はを机のに置いた。
「どうして今まで教えてくれなかったの?」
美佐子はしばらく噌汁の椀を見つめていた。
「教えたところで、どうなるとったの?」
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「でも、お父さんがずっと苦しんでいたなら……」
「夫さんは、苦しんでいたんじゃないとう」
母の返事はだった。
「じゃあ何?」
「約束を守っていたのよ」
由紀は黙った。
美佐子は静かに続けた。
「あなたのお父さんは、昔からそういうだった」
「度、自分が決めたことは誰にも言わずに最までやるだった」
「良いところでもあったけど……悪いところでもあったわね」
その言葉に、由紀はしだけ胸が痛んだ。
父はいつもそうだった。
族のためと言いながら、自分だけで抱え込む。
相談してくれればいいのに。
頼ってくれればいいのに。
そうったことは何度もあった。
しかし父は、誰かに迷惑をかけることを極端に嫌うだった。
「お父さんは、優子さんをどうしてそこまで気にしていたの?」
由紀が聞くと、美佐子は窓のを見た。
の庭には、枯れたの枝が伸びていた。
「最初は、ただ駅員として気にしていただけだったとう」
「でも、あの子はし特殊だったの」
美佐子は30の記憶を話し始めた。
青葉川駅がまだしていた頃。
そこはに数本しか列が来ない、さな駅だった。
駅員は夫を含めてだけ。
利用客のくは所の民や学だった。
そのに、佐伯優子という女がいた。
学4。
母親と暮らし。
学が終わると、よく駅の待でを潰していた。
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理由は簡単だった。
に帰っても、誰もいないことがかったから。
母親は昼だけでなく夜も働いていた。
活のためには仕方がなかった。
けれど、幼い優子にとっては、毎帰る所が暗く静かな部であることが寂しかった。
夫は、そんな優子を何度も見かけた。
最初は声をかける程度だった。
「もう帰らなくて丈夫か?」
「お母さんが帰るまで待ってます」
そんな会話だった。
ある、の夕方。
優子は駅のベンチで泣いていた。
母親と喧嘩したらしい。
理由は、さなことだった。
学の参観に来てほしい。
ただ、それだけだった。
しかし母親は仕事を休めなかった。
「お母さんは、私のことなんてどうでもいいんだ」
そう言って泣く女に、夫は何も言えなかった。
親でもない自分が、簡単な慰めを言ってもがないとった。
だから。
夫はただ温かいお茶を渡した。
「寒いからみなさい」
それだけだった。
優子はし驚いた顔をした。
「駅員さんは、優しいね」
「仕事だからだ」
夫はそう答えた。
しかし。
本当は違った。
夫自も、幼い頃に孤独を経験していた。
父をくくし、母が働きにている、でにいることがかった。
だから。
寂しい子どもの気持ちは分かるつもりだった。
優子が突然いなくなったのは、その数ヶだった。
休み直の7。
そのは朝からいがっていた。
学が終わったになっても、優子はへ帰らなかった。