"壁の中の13年" 第9話
は寝の部を壊し、もともとあった柱と柱のを利用して空を広げた。作業は夜遅くから始まり、所に音が響かないよう休みながらめたため、完成するまでいがかかった。
その夜に伊藤さんが見たの男は、茂と誠だった。
スーツ姿の茂。
作業姿の誠。
は必な資材を買いすため、度をれた。
美智子は複数のビニールや布で包まれ、寝の壁の内部に収められた。誠は妻のさなハンドバッグや分証まで緒に入れ、それから壁を塞ぎ、表面をえ、しい壁を張った。翌から、その寝は見、以とほとんど変わらない状態になった。
佐々は供述を聞きながら、誠へ何度も同じ質問をした。
「どうして妻を隠したんですか。あなたは13、奥さんを探していたことになっています」
誠はい沈黙の、「兄を守ろうとった」と答えた。
その言葉だけでは、説になっていなかった。
妻は初めての子どもを妊娠していた。
産まで約1か。
夫婦関係が悪化していたとしても、誠は失踪、京駅や病院を探し回り、町へチラシまで貼っていた。もし最初から遺体の所をっていたのなら、そののすべてが演技だったことになる。
「探しているふりをしていたんですか」
佐々の問いに、誠は首を横に振った。
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「ふりじゃない。探したかったんです」
「壁のにいるとっていたのに?」
「がおかしくなっていたんです。どこかにきている美智子がいるような気がして……」
誠自も、自分の言葉が矛盾していることは分かっていた。妻を壁へ隠した夜、現実の美智子を失った方で、翌からは「どこかへってしまった妻」という別のを自分のに作りげたという。駅へき、病院へき、らないに写真を見せながら、本当に誰かが「見ました」と言ってくれることを期待していた。
罪悪から目を逸らすためのだった。
それでもつだけ、佐々には理解できない点が残った。
「なぜ13、誰も壁を確認しなかったんですか」
誠は、を捨てるように母親のへ移ったからだと答えた。最初の1だけは々戻っていたが、寝にはほとんど入らず、扉を閉めたままにしていた。壁を見るだけで息ができなくなるため、最にはそのものへづけなくなったという。
茂は京へ戻り、何事もなかったように働き続けた。
結婚した。
子どもがまれた。
昇した。
族旅にもった。
そのずっと、弟のの壁のには、自分が置きりにした女性と、まれるはずだった子どもがいた。
13を守ったのは兄弟ではなかった。
自分たちが失うものへの恐怖だった。
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茂と誠の供述が致したことで、平成3の失踪事件はようやく刑事事件として全体像を現した。警察は当の証言やたに確認された記録を照し、茂が美智子から連絡を受けて埼玉へ移したこと、午1頃にが緒に歩いていたこと、さらに失踪の夜に兄弟が田へいたことを積みげていった。13には断片にしか見えなかった事実が、つの流れとしてつながっていった。
美智子のについては、部へのい衝撃が致命傷となった能性がいとされた。茂は故に命を奪うつもりはなく、論ので押した結果だと貫して主張したが、妊娠期の女性へい力を加えたことと、その救護せず放置したことはだった。検察側は茂の為と救命措置を取らなかった点を厳しく追及した。
誠についても、「兄を守るため」という説が法廷できく問題にされた。妻を発見した点で警察や救急へ通報せず、遺体を隠し、翌以は妻が自ら失踪したかのように振るったからである。さらに警察の捜査に対しても、兄が関係している能性を度も話さず、13にわたって真相を隠し続けた。
傍聴席には、美智子の実母も座っていた。13、娘がどこかできているかもしれないと願い続け、誠から「まだ見つからない」
と聞くたびにを痛めていた。を訪ねることもあったが、そのたび自分の娘がほんの数メートル先の壁のにいるとはにもわなかった。