"22年目の母席" 第2話
麗子はし言いにくそうにしたあと、声を落とした。
「本当に、ありがとう」
「何がですか」
「美緒をここまで育ててくれて」
京子は返事をしなかった。
「私が言うのも変だけど、謝してるの。あなたがいてくれたから、美緒もちゃんと育ったんだとう」
麗子は悪なく言っているように見えた。
だからこそ、余計に苦しかった。
「それと」
麗子はしだけづいた。
「結婚式では、あまりにないでもらえると助かります。浦は、こういうことを気にするご庭みたいだから」
京子は麗子を見た。
「こういうこと?」
「族関係です」
麗子はさく息を吐いた。
「京子さんは、本当のお母さんではないでしょう?」
エレベーターが到着した。
扉がいた。
京子は何も言わず、へ乗った。
扉が閉じる直、麗子の姿が見えた。
22。
京子は度も、美緒に自分を「本当の母親」だと言ったことはなかった。
それでも、その初めて、
自分は母親ではなかったのかもしれないとった。
京子が美緒と初めて会ったのは、22の4だった。
当35歳だった京子は、都内の文具メーカーで営業事務をしていた。結婚歴はなく、子どもを持つことについてもく考えたことはなかった。
瀬修平とは、友の紹介でりった。
修平は38歳。
婚して3が経っていた。
「子どもがいるんだ」
度目に会った、修平は言った。
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「7歳の女の子」
京子は驚かなかった。
「緒に暮らしてるの?」
「うん」
「じゃあ、その子が嫌なら無理だね」
修平はし驚いた顔をした。
「俺じゃなくて?」
「あなたが私を気に入っても、娘さんが嫌なら緒には暮らせないでしょう」
その言葉がよかったらしい。
修平はになって、何度もその話をした。
美緒の実母・麗子は、美緒が4歳のにをていた。
修平との夫婦関係はかなりから壊れており、最には別の男性との交際が原因となって婚した。麗子は娘を連れてくことを度は希望したらしいが、当緒になろうとしていた男性が子どもとの同居を望まず、最終に美緒は修平と暮らすことになった。
京子が初めて修平のを訪ねた、美緒は玄関までてこなかった。
子ども部で漫画を読んでいた。
「美緒」
修平が呼ぶ。
返事はない。
「お客さん来てるよ」
「ってる」
さな声だけが返ってきた。
京子は無理に部へかなかった。
リビングで修平と話していると、30分ほどして美緒が喉が渇いたらしく、台所へてきた。
肩までの黒い髪。
黄いTシャツ。
の柄が違う靴。
美緒は蔵庫から麦茶をし、京子を度だけ見た。
「こんにちは」
京子が言う。
「こんにちは」
それだけだった。
帰り際、京子はさな袋を修平へ渡した。
には消しゴムと鉛が入っていた。
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文具メーカーの試作品だった。
「美緒ちゃんに」
修平が笑った。
「そういうの、子どもぶよ」
ところが次に会った、美緒は京子へ言った。
「あれ、いらない」
京子はし困った。
「鉛?」
「うん」
「じゃあ捨てていいよ」
美緒はそうな顔をした。
「らないの?」
「私が使わない物をもらっても困るから」
「普通、せっかくあげたのにって言うよ」
「普通はそうなの?」
美緒は初めてし笑った。
そのの12、京子と修平は結婚した。
豪華な式はしなかった。
役所へ婚姻届をし、で所のへった。
美緒はハンバーグをべた。
京子はそのから同じで暮らしたが、「今からお母さんね」とは度も言わなかった。
美緒も最初のく、
「京子さん」
と呼んでいた。
京子はそれでよかった。
朝を作る。
学のプリントを見る。
洗濯をする。
歯ブラシを本並べる。
そういうことを毎繰り返した。
あるの夜、美緒が39度いをした。
修平は阪へ張だった。
京子はタクシーを呼び、夜診療へ連れていった。
インフルエンザだった。
帰宅したのは午1かった。
薬をませ、却シートを額に貼る。
美緒が布団のから京子を見た。
「京子さん」
「何?」
「寝ないの?」
「もうしがったら寝る」
「うつるよ」
「もう同じにいるから、今さらでしょう」
美緒は目を閉じた。
10分ほどして、京子が部をようとすると、さな声が聞こえた。
「お母さん」
京子はを止めた。
振り返る。
美緒は目を閉じたままだった。