"22年目の母席" 第1話
「ベールダウンは、麗子さんにお願いするのが番自然ではないでしょうか」
ホテルのさな打ちわせで、郎の母・浦静がそう言った、瀬京子は自分が聞き違えたのだとった。テーブルには結婚式のパンフレット、席次表の案、料理の覧が広げられ、京子の向かいには30歳になる娘の美緒、その隣には婚約者の達也が座っている。
美緒の実母である藤堂麗子は、静の隣にいた。淡いベージュのワンピースに真珠のネックレスをわせ、57歳には見えないほどきれいに化粧をしている。22ほとんど娘のに姿を現さなかった女性が、まるで昔からこの族の員だったような顔で、静かに茶をんでいた。
「京子さんには、親族のおとして式を見守っていただけばいいとうんです」
静は続けた。
「もちろん、美緒さんをく育ててこられたことは伺っています。ただ結婚式というのは、両の親族も集まる正式なでしょう。から見て分かりやすい形にしておいた方が、余計な説もいらないといまして」
京子はすぐにはを理解できなかった。
美緒が7歳のから、京子はこの子を育ててきた。
朝起こしたのも京子だった。毎弁当を作り、がれば仕事を休んで病院へ連れていき、学受験をやめたいと泣いた夜には午2まで話を聞いた。
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の卒業式でも、成式でも、学の入学式でも、美緒の隣にいたのは京子だった。
それでも、結婚式では「から見て分かりやすい形」にするため、母親ではなくなるらしい。
「私がベールダウンをするの?」
麗子がし驚いたように聞いた。
静は笑った。
「実のお母様ですもの。その方が皆さんも自然に受け取られるでしょう」
麗子は美緒を見た。
「私は、美緒が嫌じゃなければ」
その言い方が、京子には妙に優しく聞こえた。
自分から奪おうとしているわけではない。娘が望めばやるだけ。そんなを作っているようにじた。
京子は美緒を見た。
娘はずっと席次表を見ていた。
「美緒は、どうしたいの?」
部が静かになった。
達也が隣で何か言おうとしたが、美緒がさく首を振った。
やがて美緒は顔をげた。
「お母さん、ごめん」
京子の胸の奥で、何かがゆっくりえた。
美緒が「お母さん」と呼んだのは、自分に対してだった。
それなのに次に続いた言葉は、
「今回は、麗子さんにお願いしたい」
だった。
京子はしばらく美緒の顔を見た。
っているようには見えない。
泣きそうにも見える。
ただ、何かを決めてきたの顔だった。
「そう」
京子はそれだけ答えた。
美緒が急いで続けた。
「京子さんに何もしてほしくないってじゃないの。披宴にはもちろん来てほしいし、親族写真にも入ってほしい。
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でも向こうの親戚にも説しやすいし、麗子さんもせっかく——」
そこで、美緒は言葉を止めた。
京子さん。
今、美緒はそう呼んだ。
ので度も使ったことのない呼び方だった。
麗子が困ったように微笑んだ。
「京子さん、私からもお願いします。私は美緒に母親らしいことをほとんどしてやれなかったから、せめて度くらい……」
京子は麗子を見た。
度くらい。
22、度も朝を作らず、度も授業参観へかず、度も病院の待で夜をかさなかったが、娘ので最も目につくに「度くらい母親をしたい」と言っている。
静が、をえるように笑った。
「京子さんも、美緒さんの幸せが番でしょう?」
その瞬、京子のに初めて、はっきりしたりがまれた。
美緒の幸せを願うなら、自分は譲るべきだ。
それを全員が当然だとっている。
京子は膝ので両をねた。
「分かりました」
美緒が顔をげた。
「お母さん」
「そうしましょう」
京子は静かに答えた。
「ベールダウンは、麗子さんにお願いします」
麗子はしした顔をした。
静も「ありがとうございます」と言った。
その、料理や引物について話が続いたが、京子はほとんど聞いていなかった。ホテルの窓から見える夕暮れだけを眺めながら、自分が22何だったのかを考えていた。
帰り際、エレベーターので麗子が追いついてきた。
「京子さん」
呼び止められ、京子は振り返った。