"閉店写真館の11通" 第6話
それからしばらく、佐子は未受取写真を探す作業を止めた。
閉準備を優先しなければならないという理由もあったが、本当は真理との話が尾を引いていた。娘が子どもの頃、佐子は自分なりに族を切にしていたつもりだった。
朝は必ず作った。
のには弁当に真理の好きな唐揚げを入れた。
をせばを父に任せて病院へ連れていった。
受験の朝には、駅まで送った。
学の入学も、写真館の売が厳しいで何とか用した。
それでも娘が覚えているのは、自分が来なかった運会なのか。
そう考えると、し腹がった。
は、してもらったことより、してもらえなかったことを覚えている。
公平だとった。
そのを、佐子は誰にも言わなかった。
あるの昼、商の惣菜を営む崎がへ来た。
74歳になるは、佐子が子どもの頃からっている。
「閉めるんだってね」
「今さら?」
「貼りは見てたけど、あんたに言うと本当になるから嫌だったのよ」
は証写真を撮りに来たという。
「何に使うんです?」
「免許返すの」
「返納するのに写真いる?」
「違う違う。返したあと、マイナンバーカード作り直すの」
よく分からない説だったが、佐子はく追及しなかった。
撮が終わったあと、は内を見回した。
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「寂しくなるね」
「商、写真なくても困らないでしょう」
「写真は困らなくても、瀬さんちがなくなるのが寂しいの」
は撮子に座ったまま、奥の壁を見た。
「さん、怖かったなあ」
「父?」
「写真撮る、笑え笑えって言うくせに、自分は絶対笑わないの」
佐子は笑った。
父は確かにそういうだった。
族の写真もほとんど撮らなかった。
客には毎カメラを向けているのに、自分のでは「仕事で撮ってるから、でまで撮りたくない」と言っていた。
そのため、佐子の子ども代の写真はとない。
母が旅で撮ったスナップ写真や、学の集写真がだった。
「お父さん、族の写真撮らなかったでしょう」
佐子が言うと、が議そうな顔をした。
「撮ってたじゃない」
「え?」
「商の祭りとか、あんたのお母さんと緒に歩いてる写真、昔見たよ」
「誰が?」
「さんが」
佐子は首を振った。
そんな写真はにない。
「うちには残ってないよ」
「じゃあどこやったんだろ」
は簡単に言った。
その夜、佐子は階の押し入れをもう度調べた。
父の写真は量にある。
町の祭り。
成式。
結婚式。
学。
建築現。
商。
しかし自分たち族を撮ったネガはほとんど見つからなかった。
翌から、未受取写真の調査を再した。
残っている封筒は8通。
そのうちは消息のまま。
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は遺族へ連絡が取れた。
は「もう必ない」と話で断った。
「捨ててください」
相はそう言った。
佐子はし驚いた。
20以残っていた写真なのだから、誰でもぶわけではない。
そのことを当然だとっていたはずなのに、実際に言われるとし寂しかった。
話の相は続けた。
「の夫との写真なんです。今の族には見せたくないので」
「分かりました」
佐子は答えた。
その封筒は、本のを確認したで処分した。
捨てる、以ほど迷わなかった。
写真は、残せばいいというものでもない。
忘れたいには、忘れる権利もある。
閉まであと43。
そのの夕方、佐子は最までけていなかった封筒をつに取った。
表に名がなかったからだ。
付だけ。
《2004.7.18》
受付票も入っていない。
おそらく父か修が、内用に現像したフィルムだったのだろう。
処分するにを確認しようとった。
枚目。
の観だった。
枚目。
撮。
枚目。
カウンターの奥で、若い佐子が伝票をいている。
佐子は息を止めた。
2004。
自分は37歳。
写真を撮ったは、客ではない。
枚目。
レジのにつ父。
枚目。
ので宿題をしている13歳の真理。
枚目。
修が先で植にをやっている。
佐子は子へ座った。
これは自分の族だった。
誰が撮ったのか。
写真は36枚あった。
最の枚まで見た、佐子には撮者が分かった。
鏡に姿が映っていた。
カメラを構えているのは、父・だった。