"閉店写真館の11通" 第3話
佐子が茶い封筒を渡すと、子はすぐにはけなかった。
しばらく両で持っているだけだった。
「27か」
笑った。
「写真の方が私より若いですね」
封筒をく。
最初の枚を取りす。
子の表が止まった。
写真に写る夫は52歳だった。
今の佐子より若い。
子は枚ずつ、ゆっくり見た。笑ったり、何かを呟いたりすることはなく、ただ写真の表面を指でなぞるように眺めていた。
枚だけ、途でが止まった。
例の、川を見ている男の子の写真だった。
「息子です」
子が言った。
「今は?」
「会ってません」
佐子は顔をげた。
子は写真から目をさなかった。
夫が倒れてから、庭の空気は変わった。子は介護と仕事に追われ、だった息子に事や父親の世話を伝わせた。学学も県を希望していた息子を、から通える学に変えさせたという。
「私は当、それが当然だとってたんです」
子は言った。
「族なんだから助けるのが普通だって。でもあの子からしたら、17歳で急に自分のまで変えられたんでしょうね」
息子は25歳でをた。
その、結婚したというらせだけは妹から聞いたが、子とはほとんど連絡を取らなくなった。
「主がんだは来ました。でも葬式が終わったら、また帰りました」
子はそこで初めてし笑った。
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「私、写真をなくしたとってたでしょう。だからこの頃の息子の顔、ちゃんと覚えてなかったんです」
佐子は何も言わずに聞いていた。
「こんな顔してたんだね」
写真ののは、族からしれて川を見ている。
楽しそうにも、しそうにも見えない。
ただだけ別の方向を向いている。
「写真が戻ったら、息子も戻ってくるといます?」
子が突然聞いた。
佐子は困った。
「分かりません」
正直に答えた。
子はし笑った。
「そうですよね」
「でも」
佐子は写真を見た。
「これを見て、連絡したいとったなら、連絡してもいいんじゃないでしょうか」
「今さら謝って、何になるんですかね」
「それも分かりません」
また正直に言った。
「写真なのに、何にも分からないのね」
子は笑った。
佐子も笑った。
帰る、子は24枚のうち枚だけ、佐子に見せた。
夫がバーベキューの焼きそばをひっくり返し、族全員が笑っている写真だった。
「このね」
子は言った。
「帰りので、主と喧嘩したんです」
「そうなんですか」
「写真だけ見たら、幸せなでしょう?」
佐子は写真を見た。
確かにそう見える。
「でも私、腹てて帰ったんですよ。主がみすぎたから」
子は切そうに写真を封筒へ戻した。
「写真って、嘘じゃないけど、本当全部でもないんですね」
その言葉を、佐子はまで持ち帰った。
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写真は嘘ではない。
けれど全部でもない。
父は写真を「残るもの」だと言っていた。
夫の修は「残したいところだけ残るもの」と言っていた。
佐子自は、どちらが正しいのか考えたことがなかった。
へ戻ると、残り10通の封筒が机に並んでいた。
通目は、27かけて持ち主へ戻った。
佐子は赤いペンを取り、封筒を置いていた所のメモに、
《返却済》
といた。
いてから、し考えた。
戻ったのは写真だけだった。
その先で何が戻るのかは、誰にも分からない。
11通すべての持ち主が、子のように簡単に見つかったわけではなかった。話番号はほぼ全滅し、所には別がんでいたり、建物自体がなくなっていたりした。佐子はの古い顧客台帳や商のを頼り、閉作業のにしずつ名を追った。
週で、の消息が分かった。
はすでにくなっていた。
は州へ転居していた。
そして目が、松田苗という女性だった。
199912の封筒には、クリスマスの写真が入っていた。さなの居に飾られたツリー、ケーキ、赤いセーターを着た姉妹、台所から料理を運んでくる母親。どの写真にも、ごく普通の庭の夜が写っていた。
苗は現56歳で、内のスーパーに勤めていた。
へ話をすると本がた。
事を説したあと、佐子が「松田苗さんご本でしょうか」
と確認すると、相はし警戒した声で「そうですけど」と答えた。