"墓前の偽息子" 第3話
誠の話し方を真似ようとしているのか、語尾まで急に変わっている。文子はわざとを置き、困った老を装うようにさく笑った。
「そうねえ。でも誠なら、私が庫の番号を何にしたか、しくらい見当がつくんじゃないの?」
男は答えられなかった。
その、話の向こうで「もういい、貸して」という女の声がした。受話器を奪い取るような物音が続き、次の瞬、文子にも誠にもよくっている声がスピーカーから流れた。
「もしもし、お義母さん?」
誠の肩がきく揺れた。
声の主は子だった。
「誠から話は聞いてますよね? 本当に急いでるんです。番号を教えてもらえれば、それで済むんですから」
文子はすぐには答えなかった。驚いているのは当然だったが、それ以に、隣にいる誠へ妻自の声を最まで聞かせなければならないとった。話越しではあっても、これは誰かの噂でも母親の推測でもなく、本のからている言葉だった。
「子さんなの?」
「え? あ……はい。でも誠が困ってるんですから、今はそんなことどうでもいいでしょう。お義母さん、今お墓参りでを空けてますよね?」
文子は目を細めた。
自分が今、貴志の墓参りへ来ることまでっている。当然といえば当然だが、庫を狙う側にとってはな報である。が無になるを把握し、その帯に暗証番号を聞きそうとしているのだから、偶然とは考えにくかった。
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さらに子は、誠がトンネル事へっているとい込んでいる。
だから誠の携帯を使える。
だから文子の隣に本物の誠がいるなど、像もしていない。
「番号はの帳を見ないと分からないわ」
文子はゆっくり言った。
「今から戻りますから、確認したらこちらから話します。それでいいでしょう?」
話の向こうで、子が男と何か相談した。
「……分かりました。でも、なるべくくしてくださいね」
「ええ」
「それと、このことは誠には……」
言いかけて、子は止まった。
夫本になりすまして話をかけておきながら「誠には言わないで」と言えば、矛盾することに気づいたのだろう。
「何でもありません。じゃあ、待ってますから」
通話が切れた。
墓に静けさが戻った。
それまで黙っていた誠は、しばらく携帯を見つめたままかなかった。妻の声を聞き違えた能性などない。それでもでは現実を受け入れられないのか、何度かをいては閉じ、ようやく掠れた声をした。
「母さん……今の、子だったよな」
「ええ」
「俺の携帯を使って、らない男に俺のふりをさせた」
文子は頷いた。
誠は握った拳を震わせたが、鳴ることはなかった。むしろりより先に、信じていた相から裏切られた特の空虚さが顔に広がっていく。その横顔を見ていると、文子は胸が痛んだ。
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「今すぐ話する」
誠が自分のポケットを探るような仕をしたが、携帯を置いてきたことをいして舌打ちした。
「母さんのを貸してくれ。子に聞く」
「駄目よ」
文子は静かに止めた。
「どうしてだよ」
「話で問い詰めれば、向こうは証拠を消すでしょう。さっきの男が誰なのかも、あなたの携帯をどう使ったのかも、まだ分かっていないもの」
誠は反論しかけたが、文子の顔を見るとを閉じた。
「お父さんなら、こういう、何て言ったとう?」
誠はし俯いた。
い沈黙の、さく答えた。
「慌てず、確かめろ」
「そうよ」
文子は墓に残った線を見た。
「だから、へきましょう。あなたの奥さんが何をしようとしているのか、今度は自分の目で確かめるの」
墓をて誠のへ乗り込んでからも、はしばらく会話をしなかった。ハンドルを握る誠はいつもより背筋を固くし、だけを見ている。信号で止まるたびにく息を吐く姿を見て、文子は今ここで妻を責める言葉を聞かせるより、息子自が気持ちを理するを与えた方がいいと考えた。
やがて誠の方からをいた。
「俊介って男かもしれない」
文子はすぐには聞き返さなかった。
「に話しただろ。子が最、よく連絡を取ってる男がいるって。学代のりいだって言ってたけど、何度かで会ってるのをってる」