"床下の小さな指輪" 第2話
壁と片が庭へ落ち、閉ざされていた内がわになった。さらに板が剥がされ、そのから自然なほどいセメントの層が現れた。
「ここ、ずいぶん変な埋め方をしてるな」
運転が呟いた。
作業員の1が鉄棒でセメントの部を割った。
ひびのからいものが見えた。
初めは片かとわれた。
だが、埃が落ちた、作業員のが止まった。
「……待ってください」
周囲が静かになった。
男はしゃがみ込み、恐る恐る袋でを払った。
その瞬、ろへび退いた。
「骨だ」
誰かが息を呑んだ。
「の骨じゃないか……」
崩れたセメントのには、骨とわれるものが埋まっていた。そのくには、の抜けた柄のスカーフが残っている。
見物していた商の々から鳴ががった。
誰かが警察へ通報し、30分もしないうちに規制線が張られた。
現へ入ってきたのは、48歳の田刑事だった。
田はした骨をしばらく見つめた、庭の隅へ線を移した。
文は面に座り込み、魂が抜けたようにれを見つめている。
唇が細かく震え、エプロンの裾を握る指には力が入りすぎていた。
方の健は、骨の方へ顔を向けようともしない。そこに何があるのか最初からっていたかのように、壁際で線を落としていた。
田の胸に、6の記憶が浮かんだ。
広告
199111。
このから32歳の嫁、佐藤美優が突然姿を消した。
当、警察へされた届けには、こうかれていた。
夫と幼い息子を捨て、見らぬ男と駆け落ちした能性がい。
族も、目撃者も、そう証言した。
田自も、その説をく疑わなかった。
「まさか……」
彼は柄のスカーフを見つめた。
6、美優がよく首へ巻いていたものと特徴が似ていた。
鑑識作業が始まり、慎にセメントが取り除かれていった。
骨の片に当たる所から、さなものが見つかった。
の指輪だった。
が指にはめるには、あまりにもさい。
に、それは美優が息子ヒロトの1歳の誕に用したさなの指輪だったことが分かる。
美優は最まで、それをのに握っていた。
田はれを見つめながらく呟いた。
「6もかかったのか」
男と駆け落ちした女。
赤ん坊を捨てた母親。
そんな汚名を着せられたまま、美優はから1歩もていなかった。
6ずっと、族が暮らすのにいたのである。
そのの午、川警察署の刑事課に古い段ボール箱が運び込まれた。
田は自分の机ので蓋をけ、埃をかぶったファイルを取りした。表には、黒い文字で「1991 佐藤美優失踪事案」と記されている。
ページをくたびに、田の表は険しくなった。
届けは夫の佐藤健。
広告
失踪者、妻・佐藤美優、当32歳。
幼児1を残して方。
そして捜査メモには、族から聞いた話がほとんどそのままき写されていた。
〈最、夫婦関係が悪化していた〉
〈美優にはに男性がいた能性がある〉
〈失踪当、らない男性と距バスへ乗る姿を目撃した者がいる〉
最には、の能性がいとして積極な捜査を終した経緯まで記録されていた。
田は子へく座り込んだ。
「これを捜査と呼んでいたのか……」
6、携帯話も町の防犯カメラもない代だった。本が自らていったと族が証言し、さらに目撃者まで現れれば、と判断されやすい状況ではあった。
だが今読み返せば、自然な点はいくつもある。
目撃者の供述調を確認した田のが止まった。
美優が見らぬ男とバスに乗ったところを見たと証言した男は、健と同じ町で育った古くからの友だった。
「どうしてこれを確認しなかった」
田は机を叩いた。
輩刑事が驚いて振り返った。
「目撃者が夫の友なら、まず利害関係を調べるべきだった。なくとも別のが同じ面を見ていなかったのか確認するべきだろ」
記録には、その形跡がなかった。
田はさらに族の供述を読みめた。
姑の文は、嫁について厳しい言葉を並べている。
〈昔から気のい女だった〉
〈子供より自分のことを優先するところがあった〉
〈いずれていくとっていた〉
しかし客観な裏付けは1つもなかった。