"床下の小さな指輪" 第1話
199711、群馬県川町の商には、骨に染みるようなたいが吹いていた。引く況のニュースが連ラジオから流れ、昔からを構えてきた商たちは、客の減った通りを眺めながらいため息をついていた。
そのの午、商の角にある佐藤油のへ、黒いが急した。ドアがくと、作業着にのジャンパーを着た男たちが次々とり、ためらうことなく油の敷へ入ってきた。
「全部してください。財も残さず運びします」
先にった男の声に、先を掃除していた68歳の佐藤文が振り返った。40以この所でごま油を搾り、息子たちを育て、を守ってきた女だけあって、その目つきには齢をじさせない鋭さが残っていた。
「何だい、あんたたち。のへ勝に入って何をするつもりだ」
文は箒を放りし、男たちのにちはだかった。
作業員の責任者らしい男は、のない顔で分い類を差しした。
「裁判所の命令です。制執をいます」
文は類を瞥すると、面へ叩き落とした。
「制執? ふざけるんじゃないよ。ここは私のだ。40も私が守ってきただよ」
しかし男は拾おうともせず、ろの作業員たちへ目で図した。
「始めてください。抵抗されたは作業の妨げにならない所へ移してもらいます」
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靴音がのへ入り込み、押し入れがけられた。布団、類、古い器棚のが次々と庭へ運びされ、文は作業員の腕へしがみついて止めようとした。
「やめろ! の物に勝に触るんじゃない!」
屈な男たちを相に、68歳の文が抵抗できるはずもなかった。
責任者の男は、ついに庭へ座り込んだ文のへしゃがんだ。
「る相が違いますよ、おばあさん」
「何だって?」
「息子さんです。佐藤健さんが、このの権利を担保に借したこと、本当にらなかったんですか?」
文の表が止まった。
線がゆっくりとの奥へ向かう。
そこには38歳になった男、健が壁に背をつけてっていた。顔は青ざめ、母親と目をわせようともしない。
「健」
文の声がかすれた。
「あんた……の権利を持ちしたのかい?」
健は答えなかった。
責任者は淡々と続けた。
「元だけでも数千万円あります。利息をわせれば5000万円い。返済ができない以、こちらとしても執するしかありません」
文の膝から力が抜けた。
幼い頃から健を甘やかし、どれほど問題を起こしても最には自分が何とかしてきた。6にも、息子が賭博で作った借をめぐってが騒ぎになったことがあった。
それでも文は健を守った。
守り抜いたつもりだった。
「どうして……」
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のに座り込んだまま、文は息子を見つめた。
「どうしてあんたが、私にこんなことをするんだい」
その、油の裏からいエンジン音がづいてきた。
きなショベルカーだった。
と居を壊した、敷全体を理する予定になっていたらしい。債権者の男が作業員へを振り、裏を指した。
「奥にれがありますよね。あそこから先に壊してください。あとでが入れるようにします」
その言を聞いた瞬、文の顔が変わった。
それまで息子の裏切りに呆然としていた女が、弾かれたようにちがった。
「あそこは駄目だ!」
文は裏庭へ向かってった。
「れだけは触るんじゃない!」
ショベルカーのに両腕を広げてちはだかる。運転は慌ててブレーキを踏み、窓をけた。
「危ないですよ! 退いてください!」
「駄目だ。あの部は絶対に壊しちゃいけない」
「もう裁判所の命令がています。おばあさんが止めても作業は――」
「呪われてるんだよ!」
文は叫んだ。
「あそこにをしたら変なことになる。頼むから、その部だけは残しておくれ!」
騒ぎを聞きつけ、商の々が集まり始めた。
債権者の男は苛った表で作業員へ命じた。
「連れていってください」
2の作業員が文の両腕をつかんだ。
文は必にもがいた。
「放せ! あそこだけは駄目なんだ! お願いだから!」
ショベルカーのアームがゆっくりと持ちがった。
次の瞬、古いれの壁がきな音をてて崩れた。