"不機嫌夫の末路" 第8話
「何回これ繰り返したか分からない」
は黙った。
「あなたが黙るたびに、何が悪かったのか私は考えてた。言い方かな、タイミングかな、疲れてたのかなって」
言葉が止まらなくなった。
「頼み事するも顔見てた。帰ってきたの表見て、今は話しても丈夫かなって考えてた。ひなが騒いだら、あなたがるに私が静かにさせてた」
の眉がしいた。
「そこまでしろなんて言ってない」
「言ってないよ」
私は頷いた。
「言わなくても、そうなるようにしてたんだよ」
部のが静かになった。
「あなたが嫌になると、ののみんなが静かになる。あなたが元に戻るまで待つ。あなたは何も言わなくても、族全員があなたにわせる」
は反論しなかった。
私はさらに言った。
「それが、ひなにまで向いた」
その瞬、が目を伏せた。
「ひなが『パパ、ひなのこと嫌いになったの』って聞いたんだよ」
「……」
「4歳の子が、自分が嫌われたのかって考えたんだよ」
の顔が歪んだ。
「だから悪かったって言ってるだろ」
声が突然きくなった。
「これ以どうしろって言うんだよ!」
その瞬、私は分かった。
が謝った理由。
私たちが傷ついたことを理解したからではない。
自分が無される側になり、それがつらかったからだ。
ひなにまで拒まれ、自分の居所がなくなったようにじた。
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だから、この状況を終わらせるために「悪かった」と言った。
なくとも今のには、私やひながどれだけく息を詰めていたのかまでは見えていない。
「そこなんだよ」
私は静かに言った。
「何が?」
「私が今までどれだけしたか、あなたは分かってない」
が何か言おうとした。
私は止めなかった。
「ひなにまで波及してるんだよ。私だけなら、まだ私がすればいいってってた。でも違う」
ずっとみ込んできたものを、1つずつ言葉にした。
テーマパークで荷物を持って1ろを歩いたこと。
理由も分からず謝ったこと。
夕のたびにの顔を見ていたこと。
お迎えを頼んだだけなのに1週も無されたこと。
ひなの絵を見なかったこと。
娘が父親に嫌われたとって泣きそうな顔をしたこと。
「私は子どもの頃、ずっとこういうで暮らしてた」
初めてへ話した。
「父親の嫌が悪くなると、のが静かになるだった」
が私を見た。
「何をしたらるのか分からなかった。だからずっと顔見てた。自分がいるせいでってるのかとったこともある」
声は震えなかった。
「ひなの顔見た、昔の自分と同じだった」
そこまで言った、気持ちは議なほど静かになっていた。
全部言った。
もう何も残っていないとった。
は黙ったままだった。
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私は寝へき、バッグをした。
げさな荷造りをするつもりはなかった。
ひなの着替えを数分。
歯ブラシ。
幼稚園で必なもの。
お気に入りのぬいぐるみ。
自分のと仕事に必なもの。
最限だけを詰めた。
「ママ、どこくの?」
ひなが議そうに聞いた。
私はしゃがんで娘と目線をわせた。
「おばあちゃんのおうち」
「今?」
「うん」
「お泊まり?」
「ちょっとくなるかもしれないけどね」
ひなはし考えたあと、ぬいぐるみを抱えた。
「これ持ってく」
「そうだね」
はリビングにいた。
私たちが荷物を持って玄関へ向かっても、追いかけてこなかった。
引き止めもしなかった。
「かないでくれ」とも、「落ち着け」とも言わなかった。
玄関にった、瞬だけろを振り返った。
の姿は見えなかった。
私はドアをけた。
夜の空気がたかった。
ひなのさなが、私のをく握った。
その温度をじながら歩き始めた。
怖くなかったわけではない。
これからどうするのか決めていない。
婚すると決めたわけでもない。
仕事はある。
ひなの幼稚園もある。
実へいつまでいられるかも分からない。
考えなければならないことはいくらでもあった。
それでも、へ戻ろうとはわなかった。
その夜、母のに着いたのは10を過ぎていた。
インターホンを押すと、しして玄関の灯りがついた。
母がドアをけた。
私とひな、そのろの荷物を見て、目を見いた。
「どうしたの?」
私は何と答えるか迷った。