"不機嫌夫の末路" 第2話
混みので距がきそうになるたび、私はりになった。それでもが振り返ることはなかった。
最初のアトラクションの列に並んだも、はひなの隣にち、私はしれた所で荷物を持っていた。
「ママも緒に乗ろうよ」
ひなが私を振り返った。
その声だけでし救われた気がした。
けれどは私を見ないまま、ひなのを握った。
「こう」
それだけだった。
ひなは度私を見たあと、に引かれるように列の先へんでいった。
私はベンチに座り、2分の荷物を膝のに置いた。
周囲では族連れが写真を撮り、子どもが笑い、夫婦が次にどこへくか話していた。そんな何でもない景を眺めながら、私は自分が何をしてしまったのかを必に考えていた。
昼になり、私たちは園内のスペースで休憩した。
ひなはソフトクリームをに持ち、の周りをくしながらでべていた。はスマートフォンを見ていて、朝から変わらず私とは言も話していなかった。
このまま帰宅するまで無されるのはつらかった。
何より、ひなが々私たちの顔を交互に見ているのが気になった。
私はさな声で言った。
「さっきは、ごめんね」
何に対して謝っているのか、自分でも分からなかった。
言い方が悪かったのか。サングラスを買えばいいと言ったことそのものが悪かったのか。
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それとも別の何かで腹をてているのか。
それでも、これを言えば抵は終わる。
はしばらくスマートフォンを見たまま黙っていたが、やがてく答えた。
「別に」
それだけだった。
けれど、そこからしずつ嫌は戻った。
午になる頃にはひなと笑いながら話し、私にも「次どこく?」と普通に声をかけるようになった。朝の沈黙など最初からしなかったかのようだった。
私はほっとした。
そして同に、やっぱり私が言謝れば済むことなのだとった。
きな喧嘩をするよりましだ。
鳴られるわけでも、物を投げられるわけでもない。し嫌が悪くなって黙るくらい、どこの庭にもあることなのだろう。
そうやって、私は何度も自分を納得させた。
別ののことだった。
仕事を終えた私は、幼稚園へひなを迎えにき、そのでスーパーへ寄った。
「今カレーがいい」
売りを歩いている、ひなが言った。
「またカレー?」
「うん。ひな、にんじんいっぱいのがいい」
私は笑って、じゃがいもと玉ねぎ、にんじん、肉をカゴへ入れた。
帰宅してから急いで夕を作り、洗濯物を取り込みながらひなのの準備もする。いつもの慌ただしい夕方だった。
が帰宅したのは、カレーが来がった頃だった。
ひなは卓を見るなり、「カレーだ!」とんで子へ座った。
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はネクタイを緩めながら卓を見て、ぼそっと言った。
「昼もカレーだったんだよな」
私は鍋のでを止めた。
「え、そうだったんだ。言ってくれたら別のにしたのに」
悪気なく返したつもりだった。
けれど、その、は何も言わなかった。
子へ座り、無言でべ始める。
スプーンが皿に触れる音だけが妙にきく聞こえた。
「パパ、おいしい?」
ひなが聞いた。
「うん」
は娘を見ずに答えた。
「パパ、カレー好き?」
もう度ひなが聞いた。
今度は返事がなかった。
ひなはスプーンを持ったままの顔を見ていた。
私は慌てて話題を変えた。
「ひな、今幼稚園で何したの?」
「粘!」
「何作ったの?」
「ケーキとね、うさぎ」
なるべくるい声をした。
ひなもすぐ話し始めたけれど、の沈黙が卓から消えるわけではなかった。
、がリビングを横切って自へ向かおうとした。
その途、に転がっていたひなのさなおもちゃを踏んだ。
「痛っ」
がい声を漏らした。
「あ、ごめん。ひな、片づけようね」
私がすぐに拾おうとすると、は何も言わず、そのまま自へ入った。
ドアは乱暴に閉められたわけではなかった。
むしろ静かだった。
その静かさの方が、私には苦しかった。
「パパ、丈夫?」
ひなが廊の方へ声をかけた。
返事はなかった。
翌朝も空気は戻っていなかった。
「パパ、おはよう」
朝の席でひなが言った。
はスマートフォンから顔をげなかった。