"不機嫌夫の末路" 第1話
「おがそうやって俺を悪者にするから、何も言えなくなるんだよ。そっちの方こそモラハラだろ?」
夫のにそう言われた、私は瞬、何を言われているのか理解できなかった。私がを追い詰めているような言い方だったけれど、気に入らないことがあるたびに私を無し、ついには4歳の娘ひなまでざけたのは、の方だった。
話しかけても返事をしない。こちらが謝るまでのをたい空気で満たし、何事もなかったように嫌を戻す。それを私はずっと、夫婦ならはあることなのだとい込んでいた。
けれど、もういい。
届かないなら、届かなくてもいい。
ひなにだけは、幼い頃の私と同じいをさせたくない。その、私は初めてはっきりと、く続いてきた何かを自分の代で終わらせたいとった。
私は望美。フルタイムで働きながら、夫のと4歳の娘ひなの3で暮らしていた。
傍から見れば、ごく普通の庭だったとう。きな借があるわけでもなく、夫婦のどちらかがを空け続けるわけでもなく、所に聞こえるような鳴り声が響くこともなかった。
ただ、には1つだけ、ずっと気になっていたところがあった。
嫌が悪くなると、黙るのだ。
何かを尋ねても返事をしない。聞こえているはずなのにこちらを見ず、まるでそこに誰もいないように振るう。
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最初の頃は、疲れているのだとっていた。
仕事で嫌なことでもあったのだろう。1になりたいもあるだろうし、夫婦だからといって何でも話さなければいけないわけではない。
そう考えて、く追及しないようにしていた。
けれど、その沈黙には決まってきっかけがあった。
私の言い方が気に入らなかった。自分のい通りにならなかった。予定が狂った。
原因が分からないこともなくなかった。
ある休の朝、族3でテーマパークへく予定があった。
ひなはのから楽しみにしていて、朝起きるなりベッドのでねながら、「今だよね? 遊園くだよね?」と何度も聞いてきた。
「そうだよ。だからく着替えようね」
私は笑いながらパジャマを脱がせ、用しておいたに着替えさせた。朝をべさせ、ハンカチや着替え、み物をリュックへ詰め、焼け止めを塗って子をかぶせる。
その、はリビングで自分のサングラスを探していた。
棚をけ、引きしを引き、テレビ台のに置かれていた物を次々とかしている。その作がしずつ乱暴になっていくのを、私はキッチンから見ていた。
「見つからないなら、で買えばいいじゃん」
何気なく言っただけだった。
責めたつもりも、馬鹿にしたつもりもない。発も迫っていたから、現に着いてからいものを買えばいいとっただけだった。
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ところが、は何も答えなかった。
「あれ? 聞こえた?」
もう度声をかけようとして、やめた。
その瞬、空気が変わったのが分かったからだ。
何が悪かったのかは分からない。
サングラスが見つからないこと自体に腹をてているのか、それとも「で買えばいい」という私の言い方が気に障ったのか。の嫌が落ちた理由を考える、私はいつも答えのない問題を解かされているような気分になった。
に乗ると、私は助席、ひなは部座席のチャイルドシートに座った。
「ママ、見て。赤い!」
「本当だ。かっこいいね」
窓のを指差してはしゃぐひなに返事をしていると、がバックミラー越しに娘を見た。
「ひな、楽しみだな」
「うん! いっぱい乗る!」
の声は普通だった。
娘には普通に話しかける。笑いかけることさえある。
それなのに、私の方には度も目を向けなかった。
「今、混んでるかな」
私はなるべく何でもないような声で言った。
返事はなかった。
の音だけが内に流れた。
また始まった。
胸の奥にいものが落ちていく覚がしたけれど、ろにはひながいる。せっかく楽しみにしていたを台無しにしたくなくて、私はそれ以何も言わなかった。
テーマパークへ着くと、はひなのを引いて先に歩き始めた。
私はきな荷物とベビーカーを抱え、そのろを追った。