"4200万円の隠し家" 第8話
「困るのはお兄ちゃんでしょう」
「俺はおたちのために――」
「私のためなら、どうして保証のことを説しなかったの?」
慎也のが止まった。
織は弁護士へ相談し、保証に関する類を精査していた。署名や押印の経緯について争う余があるため、今は専を通じて側とも確認するという。
「借は全部俺が背負うって言ったよね」
慎也は黙った。
「なのに、私にも責任が及ぶかもしれない類に印鑑を押させた。子どもいる私に、何の説もしないで」
「絶対に迷惑はかけないつもりだった」
「もうかけてるよ」
織はバッグを持った。
「からアパート探す。子どもたちには悪いけど、このにはいられない」
慎也が腕を伸ばしたが、織はそのを避けた。
私はその景を見ながら、夫が切にしてきたものが何だったのか、しずつ分かり始めていた。
いい夫。
いい息子。
頼れる兄。
その全部を。
同に演じたかった。
だが、自分の力だけでは支えられない。
だからする部分を。
私のお。
妹の責任。
未来の退職。
まだにしていないまで使って。
埋めようとした。
その結果。
誰。
守られてはいなかった。
織がをると宣言した、文と慎也は互いに責任を押しつけ始めた。文は「私は膝が悪いから暮らしやすいにみたいと言っただけ」
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と主張し、慎也は「母さんがもっといいにみたいと言ったから探したんだ」と言い返した。ほんのしまで「族のために買った」と呼ばれていた居は、都が悪くなった途端、誰も責任を持ちたくない荷物へ変わっていた。
私はめた茶をに、そのやり取りをしばらく見ていた。慎也が守ろうとした族とは、こんなものだったのかとうと、りより虚しさの方がきかった。彼は誰かと真剣に話しう代わりに、そのでばれる言葉を選び続けた結果、族同士が本当の事をらないまま同じへ押し込まれていた。
「もう責任の押しつけいはやめて」
私がをくと、とも黙った。
「慎也、あなたは族を守るためにを買ったと言うけれど、実際には誰も守っていない。私には賃貸だと嘘をつき、お義母さんには私の遺産があると言い、織さんには私も同していると言った。誰からも嫌われたくなくて、そので番都のいい話をしてきただけでしょう」
慎也はソファに座ったまま、唇を噛んでいた。
「払えなくなったら私のおで穴埋めする。織さんには毎5万円をしてもらう。自分は退職まで全部入れる。それで私たち夫婦の老はどうするつもりだったの?」
「退職がれば、何とかなるとってたんだ」
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「退職は魔法のおじゃないわ」
私は税理士事務所で見てきた例をい浮かべながら説した。55歳から25のローンを組めば、返済に収入はがり、修繕費や固定資産税、保険料、医療費といった負担はむしろ増えていく。さらに私たち自のも築数がみ、回りや根の修繕が必になる期だった。
「あなたは々の返済額だけ見て、『払える』と考えた。でもを持つって、へおを返すだけじゃないのよ」
織も俯いていた。
「私、お兄ちゃんから5万円だけでいいって言われてました。修繕費とか税の話は度も聞いてません」
「そうでしょうね」
私は慎也を見た。
「このは、将来必になるおを誰が払うのか決めていない。問題が起きたの答えだけは決まってたみたいだけど」
慎也が顔をげた。
私は続けた。
「私の2400万円よ」
文がそこでを挟んだ。
「でも佳代さんには本当にそれだけあるんでしょう? 慎也の退職が減ったって、の老くらい何とかなるじゃない。族なんだからしくらい融通したって――」
「お母さん、いい加減にして」
今度は織が母親を止めた。
「佳代さんのお父さんのおだよ。どうして私たちが使える提で話してるの? 私だってらなかったし、ってたら絶対このには来なかった」
「私はあなたたちのためをって……」
「のおを勝に当てにして、それを『ためをって』って言わないよ」
文は顔を伏せた。
私はその、ようやく自分ので答えが固まった。