"4200万円の隠し家" 第5話
毎5万円という額が3600万円のローン全体から見れば分とは言えなくても、パートでの子どもを育てている織にとってはさな額ではない。彼女なりに居費を負担し、兄夫婦に迷惑をかけないつもりだったらしい。
「もし佳代さんが反対しているってってたら、こんなにはみませんでした」
織は涙を拭きながら言った。
「古いでもよかったんです。もっとい賃貸だって探せたはずです。お兄ちゃんが『佳代も賛成してる』『自分が全部責任を持つ』って言うから信じたんです」
私は織を責める気にはなれなかった。
問題は慎也だった。
「の600万円について、もう度聞くわ」
私はテーブルの向こうに座る夫を見た。
「本当にあなた自のおからしたの?」
「そうだよ」
「通帳を見せて」
慎也はらかに揺した。
「今ここにはない。会社に置いてある」
と同じ言い訳だった。
私は何も言わずちがり、寝へ向かった。クローゼットの奥には慎也が貴品をまとめている引きしがあり、結婚して27、私はそこを勝にけたことがない。互いのものを無断で探らないという最限の信頼があったからだ。
だが、その信頼を先に壊したのは夫だった。
引きしをけると、青い通帳が番に置かれていた。私はリビングへ持って戻るにページをめくり、600万円の振込記録を探した。
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確かにあった。
産会社へ600万円。
そして、その付を見た瞬、私は元が揺れるような覚に襲われた。
父の通夜のだった。
「慎也」
リビングへ戻った私は、通帳をテーブルのへ置いた。
「この600万円を振り込んだ、覚えてる?」
慎也は付を見て、表を失った。
「私の父の通夜のよ」
文も織も言葉を失った。
私は当の景をはっきり覚えていた。喪を着て、次々に来る弔問客へをげ、父の遺を見るたび胸が潰れそうになっていた。慎也はそんな私へ「こっちのことは任せろ。佳代は無理するな」と言っていた。
「あなたが私を配して言ってくれた言葉だとってた」
慎也は何も言わない。
「でも違ったのね。私が葬儀からけないに、へって別ののを振り込んでいた。私が番っているなら気づかれないとったの?」
「そんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どういうつもりだったの?」
声を荒げるより、静かに聞く方が自分にはっていた。鳴れば慎也も声をげ、いつのにか夫婦喧嘩という形へ話をすり替えられてしまう。それだけは避けたかった。
「お義母さん、織さん。私はこのを買うことに度も同していません。父の遺産を使うと言ったことも度もありません」
織は何度も頷いた。
文はまだ納得できないようだった。
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「でも佳代さん、もう買ってしまったものは仕方ないでしょう。族なんだから、これからどうするかを考えた方が――」
「そのに確認することがあります」
私は文の言葉を遮った。
「このを買うために、慎也がどれだけ借を抱えているのか、全部確認します」
慎也は驚いたように顔をげた。
「宅ローンだけじゃないの?」
私は夫を見る。
「のローン、クレジットカード、キャッシング、フリーローン。全部よ。までに契約と細を揃えて」
「そんなげさなことをする必ないだろ」
「3600万円の契約を半隠していたの『丈夫』を、今さら信用できるとう?」
夫は黙った。
そのの話しいはそこで終わった。
文と織が帰り、私は寝の鍵を閉めた。慎也は何度かドアのまで来たが、声をかけることはなかった。
夜になってをみに廊へた、夫の斎のかりがついていた。
翌朝、慎也が勤したに斎へ入ると、デスク脇のゴミ箱に自然に丸められたがあった。普段なら触れないが、宅ローン以の借入れを確認する必がある以、無することはできなかった。
広げると、系カードローンの利用細だった。
残、約200万円。
々の返済、5万円。
私はを見ながら、ゆっくり子へ座った。
のローンだけではなかった。
慎也はすでに、別の借で活費のを埋め始めていた。
600万円のをかしたことで元資がなくなり、毎の返済に追われ、りない分をさらに借りる。