"4200万円の隠し家" 第4話
そこまで聞くと、「頃な賃貸」という慎也の説が最初から自然だったことに今さら気づかされた。
「お義母さん。私はあのを賃貸だと聞いていました」
文は湯呑みに伸ばしていたを止めた。
「何を言ってるの? 買ったに決まってるじゃない。あんな派な戸建てを賃貸で借りるわけないでしょう」
「母さん!」
慎也が慌てて声をげた。
文は怪訝そうに息子を見る。
「何よ。今さら隠すことじゃないでしょう」
私は慎也ではなく、文へ尋ねた。
「ローンがいくらか、ごじですか?」
「詳しい額はらないわよ。でも慎也が払えるって言ったんだから、払えるんでしょう。今ちょっと引き落としができなかっただけで、そんな騒ぎすることじゃないわ」
そこで文は、ありげに私を見た。
「佳代さんだって、いざとなれば余裕があるんでしょう?」
慎也の顔が変わった。
「母さん、その話はやめろ」
文は息子の制止などに介さず続けた。
「お父様から2400万円くらい相続したんでしょう? 慎也がそう言ってたわよ。もしローンがし苦しくなっても、最はそこから助けてもらえるから配しなくていいって」
私は瞬、音がのくような覚に襲われた。
2400万円。
額まで正確だった。
「お義母さん、その額を誰から聞いたんですか?」
「誰って、慎也よ」
文は悪びれもせず答えた。
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「を買うに聞いたわ。佳代さんもを買うことには賛成してるって。あなたのお父様のおもあるし、退職もるから、最までちゃんと面倒を見るって言ってくれたのよ」
今度こそ、夫に逃げはなかった。
私はゆっくり慎也を見た。
「昨、あなたは『もし苦しくなったら私からに借りようとった』と言ったわよね」
慎也は両で顔を覆った。
「でも実際には、を買うからお義母さんにそう話していた。最初から私のおを返済計画に入れていたんじゃない」
「違う。母さんをさせたかっただけなんだ」
「どうして私のおでお義母さんをさせるの?」
その、再びインターホンが鳴った。
モニターに映っていたのは、義妹の織だった。
玄関をけると、織は髪を乱し、肩で息をしながらっていた。には使い古したトートバッグを握り、顔は青ざめている。
「佳代さん、ごめんなさい。お兄ちゃんから『の資料を見られた』って連絡が来て……私、直接話さないといけないとって」
慎也がリビングからびしてきた。
「織、おまで何しに来たんだ!」
私はのにった。
「きな声をさないで。織さんにも聞かなければならないことがあるから」
織をリビングへ通し、私は正面から尋ねた。
「あなたがあのの2分の1の所者になっていることを、私は昨初めてりました」
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織の顔から血の気が引いた。
「昨……?」
「ええ。私は賃貸だと聞いていたの」
織はしばらく私と慎也を交互に見た、目に涙を浮かべた。
「やっぱり、お兄ちゃんの嘘だったんですね」
「どういう?」
織はバッグから冊の通帳をした。
「私はお兄ちゃんから、佳代さんもを買うことに賛成しているって聞いていました。夫婦でお母さんと私を支えてくれることになったから、してめばいいって。でも、私だってただでませてもらうつもりじゃありません」
通帳には、毎決まったに5万円ずつ慎也の座へ振り込んだ記録が残っていた。
「パート代から毎5万円払っています。子どもたちにも部ができるし、これなら賃と同じくらいだからって。でも佳代さんが何もらないなら、話が全然違うじゃないですか」
文もをけたまま固まっていた。
私はそこで、ようやく全体像を理解した。
慎也は私には「賃貸へ引っ越す」と言い、文には「佳代の遺産があるから丈夫」と説し、織には「佳代も承して夫婦で支える」と話していた。へ別々の話をし、それぞれが自分に都のいい形で納得するよう仕向けていたのだ。
「慎也、あなたは誰に本当のことを話していたの?」
夫は答えなかった。
答えられるはずもなかった。
本当のことなど。
最初から。
誰にも話していなかったのだから。
織が持参した通帳を確認したことで、なくとも彼女自が全く負担せずをに入れようとしていたわけではないことが分かった。