"23回拒まれた元部長" 第10話
数、加藤はクローゼットから古いレフカメラを取りした。昔、旅用に買ったものだったがほとんど使っておらず、源を入れても操作方法をいせない。説を探していると、郵便受けに入っていた域交流センターの案内が目に入った。
「シニア向け写真撮講座・初者歓迎」
加藤はをに取り、しばらく眺めた。ゴルフ練習へ戻ればスタッフの目があるし、公民館のパソコンサークルにはもうけない。しい所なら、自分のことをっているはいない。
翌、加藤は量販へき、しいミラーレスを購入した。員から基本操作の説を受けながら、、構図、シャッタースピードなどの言葉をにメモする。帰宅するとインターネットで「初者が失敗するカメラの持ち方」「構図の基本10選」といった記事を読み、ノートへまとめ始めた。
数には、そのノートの表へしい文字がかれていた。
「写真初者 指導ポイント」
加藤自は、まだ度も写真講座を受けていなかった。
写真講座の初、域交流センターには20ほどの参加者が集まった。スマートフォンしか使ったことのない、昔のフィルムカメラを趣にしていた、孫をきれいに撮りたいという70代の女性など、参加理由は様々だった。
広告
講師は最初に「今は材に慣れることが目ですから、違っても構いません」と説し、参加者を自由に撮させた。
加藤は講師の話をに聞いていた。ところが自由になると、自分のカメラで撮るより周囲の参加者へ目が向いた。隣の席にいた72歳の男性がカメラを両で持ち、液晶画面を見ながら操作に戸惑っているのを見つけると、加藤の体はほとんど反射にそちらへいた。
「ああ、その持ち方じゃぶれしますよ。はもっとく握らないと」
男性は驚いて顔をげた。「いや、まだ先の説を聞いたばかりなので、自分でし触ってみます」と笑った。ごく普通の、角をてない断り方だった。
加藤は瞬止まった。
23回という数字がをよぎった。野に肩を触られたの、支配から言われた「相が断ったも続けたことが問題です」という言葉、妻から聞かされた「部だったからでしょう」という言も、いので次々に浮かんだ。そこで引き返せば、加藤のそのはし違っていたかもしれない。
しかし、加藤は男性の元を指さした。
「最初だからこそ変な癖をつけない方がいいんです。僕もくを指導してきましたから、基本くらいなら分かります。ほら、まず肘を――」
男性の表から笑みが消えた。それでも加藤は気づかず、「元企業の管理職だった僕が教えますから丈夫です」
広告
と続けた。所は変わり、具はクラブからカメラへ変わったが、やっていることは何つ変わっていなかった。
そのの夕方、講師は加藤を呼び止めた。「参加者同士で教えうのは構いませんが、相が断ったはそこでやめてください」と注した。加藤は「分かっていますよ」と笑ったものの、帰りでは「最は親切にもいちいちルールが必なのか」と満を募らせていた。
加藤にとって問題なのは、自分のではなかった。受け取る側の姿勢であり、最の社会の余裕のなさであり、若者や齢者の向のさだった。原因を側へ置き続ける限り、加藤が自分自を見る必はない。
方、佐藤はゴルフ練習でしい習慣を作っていた。に度だけ正式なレッスンを受け、それ以のはで練習する。レッスンプロは佐藤が「今はここだけ見てほしい」と言えば、その部分だけを確認し、佐藤が「度自分で試します」と言えば黙って距を取った。
ある、佐藤はレッスンに「教える側として、相が自分でやりたがっているって分かるものですか」と尋ねた。プロはし考え、「分かるかどうかより、分からなければ聞けばいいんですよ」と答えた。
「今、言っていいですかって。相が『丈夫です』と言えば、それで終わりです。教える側が納得する必はありませんから」
佐藤はその言葉を聞き、加藤との2ヶをいした。