"膨腹の老人ホーム" 第5話
「すみません。佐藤美咲さんですか?」
突然名を呼ばれ、私は警戒した。
「そうですが……どちら様ですか」
男性は度施設の窓を見げ、それから声を落とした。
「藤原梅の孫です。藤原満と申します」
私は息を呑んだ。
梅さんが「みっちゃん」と呼び、あれほど配していた孫だった。
「梅さんが変なんです」
わずにすると、満の表が変した。
私は目のない建物脇へ移し、この数の異変をできるだけ簡潔に説した。腹部膨満、神崎の夜訪、まされているという包み、族への脅し、そして昨夜の黒い。最に、ベッドから回収した透フィルム片の入った袋を見せた。
満は袋へ触れず、顔をづけることもせずにしばらく見つめた。
「これを、こちらで預かってもいいですか」
「検査できるんですか?」
彼はすぐには答えなかった。
代わりに名刺入れから枚のカードを取りし、私へ見せた。
肩きを見た瞬、私は驚いた。
労働省方局。
薬物犯罪や医療施設を利用した正事案の調査にも関わる部署の職員だった。
「祖母がいる施設なので、私自は捜査のかられています。ただ、半からこの施設の運営会社に審な資移があるという報はがっていました」
「じゃあ……黒田たちはから?」
「疑いはありました。でも齢者へ直接何かをませているなんて話は初めてです」
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満は度唇を噛み、すぐにスマートフォンを取りした。
「今から正式に連絡します。佐藤さんは無理にかないでください。祖母たちの全を最優先にします」
ようやくへつながった。
そうった。
しかし。
そのの夜。
状況は気にいた。
午8を過ぎた頃、私は備品庫の理をしていた。
本来なら夕方で勤務終だったが、神崎から「今の分が終わるまで帰るな」と命じられていたため、へ古いリネン用品を運んでいた。満へ証拠を渡してから数経っており、部がき始めているはずだといういだけが支えになっていた。
廊の突き当たりで、突然背から声をかけられた。
「佐藤さん」
黒田だった。
隣には神崎もいる。
「し確認したいことがあるんだ。保守へ来てもらえるかな」
嫌な予がした。
「何でしょう。ここで聞きます」
黒田の表から笑みが消えた。
「今、裏で誰と話していた?」
私は答えなかった。
「を聞かれただけでしょう?」
「ずいぶんい案内だったのね」
神崎がづいてきた。
「それに梅さんの部から何か持ちしたでしょう。監映像に映ってたわよ」
私はポケットへを入れられそうになり、歩がった。
幸い証拠はすでに満へ渡してある。
それでも、そのが答えになってしまった。
神崎の目が細くなった。
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「やっぱり何かってるのね」
次の瞬、背の非常扉から男が現れた。
施設職員ではなかった。
私は逃げようとしたが腕をつかまれ、の奥にある古い保守へ押し込まれた。そこは改修にボイラー設備を管理していた部で、現はほとんど使われず、携帯話の波も届きにくい所だった。
へ倒れた私を見ろし、黒田は静かにため息をついた。
「君には何度も余計なことをするなと言ったはずだ」
「梅さんたちに何をませてるんですか」
「らなくていいことだよ」
「とも病院へ連れてかなければ危険です」
すると神崎が笑った。
「だから今夜、ちゃんと処置するのよ」
その言い方に、私はぞっとした。
「処置?」
「に入っているものを回収するの。予定よりくね」
私はちがろうとしたが、男に肩を押されて再び壁へぶつかった。
黒田は腕計を確認した。
「君が騒ぎ始めたから、計画を倒しすることになった。まったく、余計なを増やしてくれたよ」
「をどうするつもりなんです」
「それも君がる必はない」
ただし黒田の次の言葉だけで、私は最悪の能性を理解した。
「今夜にだけ回収できればいい」
ではなく。
。
梅さんたちの体を、最初からとして見ていない言葉だった。
私は声をげたが、い扉が閉まり、側から施錠される音がした。
数秒には廊の音も消え、暗い保守には古い配管の振音だけが残った。