"膨腹の老人ホーム" 第3話
シーツ交換や転倒防止の確認など、介護業務として必な範囲だけを丁寧に見ていたところ、梅さんのベッド脇に落ちていたゴミ箱の裏から、さく裂けた透フィルムがてきた。表面には粘着テープを剥がしたような跡があり、ほんの量だがいのようなものが付着している。
私は素では触れず、施設備品の清潔な袋に入れて保管した。
これが何なのか、私には分からない。
違法な薬物なのか。
別の何かなのか。
それでも、なくとも齢者へ無理にませてよいものではないことだけは確かだった。
翌朝になれば、部へ連絡する。まず族、域包括支援センター、必なら政や警察にも相談するつもりだった。ところが勤務終、黒田から突然呼びしを受けた。
施設へ入ると、黒田は革張りの子にく腰掛け、類をめくりながら私を見ることもなく言った。
「佐藤さん、最ずいぶんに階を回っているそうだね」
「体調の悪い方がいますから」
「主任から聞いたよ。君は配性なんだって?」
「急激な腹部膨満です。医療につなげる必があるといます」
そこで初めて、黒田は顔をげた。元には笑みが浮かんでいたが、目だけはまったく笑っていなかった。
「施設運営には順序がある。現の介護士が勝に騒げば、ご族にも余計なを与えるんだよ」
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「でも、本当に何か起きてからでは遅いです」
「何か?」
黒田は子からしを乗りした。
「君は何が起きているとっているのかな」
その問い方に、私は背筋がたくなった。
らないの質問ではなかった。
私がどこまで気づいているのか。
確かめようとしているの聞き方だった。
そのは勤務を終えても、私は施設をれなかった。
タイムカードだけは定刻で押し、制から私へ着替えたあと、裏庭に面した古い備品倉庫へを隠した。正規の続きをばしてで調べるべきではないことは分かっていたが、証言だけで黒田や神崎を問い詰めれば、を別の所へ移される恐れがある。まず今夜何が起きているのか、自分の目で確認したかった。
倉庫には古い子や壊れた歩器、季節れの飾り物が積まれていた。埃と湿気の匂いに咳をこらえながら、私はドアの隙から裏駐を見続けた。午11、午0、午1とだけが過ぎ、何も起こらないまま自分の考え過ぎだったのではないかという気持ちまで浮かび始めた。
変化があったのは午2をし回った頃だった。
側から台の黒いセダンが入ってきた。ヘッドライトをめに消し、施設正面ではなく裏の壁際へ静かに寄せるめ方には、なくとも通常の業者訪問とは違うものがあった。
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部座席から、黒いコートを着た男がりた。
ほぼ同に裏がく。
神崎がてきた。
そして、そのろからもう現れた物を見た、私はわずをで覆った。
黒田施設だった。
男はトランクからのケースを取りし、黒田へ渡した。くて会話のすべてまでは聞こえなかったが、「今夜」「」「まで」という単語だけはに乗って届いた。神崎はケースを受け取ると、を確かめるようにしだけ蓋をけ、すぐに閉じた。
私ので最まで残っていた「神崎の暴」という能性が消えた。
黒田も関わっている。
しかも施設のから何かが運び込まれている。
男がったあと、はのケースを持って施設内へ戻った。私はすぐにはかず、分以待ってから倉庫をた。
通報しなければならない。
だが自分の携帯話を取りしたところで、私は指を止めた。
梅さんの言葉がよみがえったからだ。
《孫のもってるって》
単なる脅しなのかもしれない。それでも、本当に施設に仲がいるのなら、こちらが無計画にくことで族へ危険が及ぶ能性も否定できない。私はまずを医療関へし、体の異物を証拠として確認してもらう方法が最も確実だと考えた。
翌朝7、私は通常よりく施設へ戻った。
梅さんの部を訪ねると、彼女の顔はさらに悪くなっていた。