"11年目のコロッケ" 第2話
という話は完全な事実として広まっていった。
そして半もしないうちに、父は京子をしい妻としてへ迎えた。
「ねえ、聞いてるの?」
京子の声で私は現実へ戻った。
「あなたのお母さんが盗んだおのせいで、このがどれだけ迷惑したとってるの。今こそ皆さんので謝りなさい」
扇子が私のでぴしゃりと閉じられた。
「座して、『棒の娘ですみません』って言いなさい」
父もたい目で私を見た。
「さっさと謝れ。今おを呼んだのは、そのけじめをつけさせるためだ」
私はゆっくり膝をついた。
親族から「くしろ」「母親の罪は娘が償え」と声がぶ。
そのだった。
玄関のインターホンが鋭く鳴り響いた。
座敷の障子が勢いよくいた。
そこにっていたのは、こので政婦として働いている佐藤さんだった。普段は何を言われても静かにをげる女性なのに、そのは顔を青ざめさせ、両を震わせていた。
「旦様……奥様……」
京子が眉をひそめた。
「何よ。法事の最でしょう」
佐藤さんはだらけの茶封筒と、古びた布のようなものを差しした。
「裏の古い井戸で、自治体の調査がありまして……底から、これが見つかったそうです」
「井戸?」
父は苛ったようにちがり、茶封筒をひったくった。
を見た瞬、その顔から血の気が引いた。
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封筒が父のから滑り落ち、で汚れたや布切れが畳のに散らばる。
京子がそれを見た途端、い鳴をげて腰を落とした。
私はちがることも忘れ、そのに固まった。
黒ずんだ布切れ。
それは11、母が「夕飯を買ってくる」と言ってをたに羽織っていたカーディガンと同じだった。
さらに類のから、黄く変したさなレシートがてきた。
私はわずを伸ばした。
『精肉』
付は11の1015。
刻は1845分。
『特製コロッケ 4個』
胸の奥で何かが崩れた。
母は本当にコロッケを買っていた。
あの、私との約束を守ろうとしていたのだ。
男と逃げるためにをたのではない。
なくとも、をた点ではこのに帰るつもりだった。
「なんだこれは!」
父の声が座敷を震わせた。
「警察の嫌がらせか? 裕子は男と逃げたんだ。も盗んだ。この切れ1枚で何が分かる!」
その、廊から音がづいてきた。
現れたのは2の刑事だった。
につ初老の刑事が、座敷を静かに見回した。
「黒田です。突然の訪問を失礼します。健さんですね」
父の顔がこわばる。
黒田刑事は淡々と説した。
裏の主である自治体が、古い井戸の危険箇所を調査していたところ、けられていなかったコンクリートの蓋のから複数の物品がてきたという。
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「だから何だ」
父は声を荒らげた。
「裕子が逃げるに捨てただけだろう」
その額には粒の汗が浮かんでいた。
突然、京子がちがった。
「この子よ!」
血った目で私を指差した。
「み咲がやったのよ。私たちを陥れるために、どこかで拾ってきたものを井戸に入れたんだわ。母親と同じで性根が腐ってるのよ!」
親族たちもざわめき始めた。
「この娘ならやりかねない」
「母親のことで逆みしてるんじゃないか」
私は何も言わなかった。
母のカーディガンとレシートだけを見つめていた。
お母さんは帰ってきていた。
その確信だけが胸の奥で膨らんでいった。
「娘さんを疑ってはいません」
黒田刑事がい声で言った。
「証拠品は、11度もけられていなかった分いコンクリートの蓋のからています。当14歳だった娘さんが、1で蓋をかして物を入れ、再び封鎖することは現実ではありません」
京子が言葉を失った。
黒田刑事はさらに別の証拠品袋を取りした。
「健さん。先ほど奥様が現を盗んで逃げたとおっしゃいましたね」
透な袋のには、ビニールで包まれた量の幣が入っていた。
父の顔が凍りついた。
「井戸の底から見つかったものです」
座敷が静まり返った。
「現を盗んで逃げた女性が、なぜその現を自宅裏の井戸へ捨てる必があるのでしょうか」
父は答えられなかった。
黒田刑事が証拠品袋を裏返した。
その裏側に貼りついていたものを見た瞬、私の背筋にたいものがった。