"灯油札の密告" 第5話
湊の写真は学入学式のに撮られたもので、黄い子ときなランドセルがまだ体に馴染んでいない。
斎藤は親族よりく会へ入り、受付や子の理を伝っていた。弔問客が来るたびくをげ、事がりなくなれば自分から厨へり、由里の父親がちがろうとすればすぐ肩を貸した。誰かが休むよう勧めても、「には返せないほど世話になりましたから」とかすれた声で答えた。
夜10を過ぎ、弔問客がなくなると、斎藤は湊の遺のへ膝をついた。肩を震わせ、何度も息を詰まらせながら、額がにつくほどくをげた。
「ごめんな、湊。おじさんが助けてやれなくて、本当にごめんな」
くにいた女性がハンカチで目を押さえた。の父親も斎藤の背へを置き、「おのせいじゃない」と慰めた。事をらない者が見れば、斎藤は族を失ったのと同じほどく傷ついているようにしか見えなかった。
会のろにつ野は、その姿を黙って見ていた。泣いているから犯であるという理屈はないし、泣いているから無実とも限らない。だから野は斎藤の表ではなく、、、、言葉の順序だけを注して見ていた。
斎藤がちがろうとしてをについた、ジャンパーの袖が肘くまでずりがった。
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災現で瞬しか見えなかった本の傷が、るい蛍灯のではっきりと確認できた。どの傷も首から腕の内側へ同じ方向にり、爪をててく引いたにできる形によく似ていた。
野が静かにづいた。
「ずいぶんい傷ですね」
斎藤の肩がわずかに固まった。
「にも言ったでしょう。野良猫です。曜だったかな、餌をやろうとして引っかかれました」
「曜というと15ですね」
「たぶん。それくらいです」
野はそれ以聞かなかった。斎藤はしたように袖を引きろしたが、彼が横を向いた瞬、髪に隠れていたのろに赤い傷跡が見えた。さな疱が潰れたばかりのようなしい痕だった。
「それも事のですか」
野が尋ねると、斎藤は瞬遅れて頷いた。
「そうですよ。助けに入ろうとしたにのがんできたんでしょう」
野は「なるほど」とだけ答えた。
葬儀をたあと、たいのる駐で警察帳をいた。「首の傷、本説15。部、しい傷。消防映像確認」とくき込む。背の建物から斎藤の泣き声がまた聞こえたが、今の野には最初の夜とは違う響きに聞こえていた。
翌朝、斎藤の辺調査が本格化した。
46歳。元自転修理経営。を畳んだは定職なし。競輪やパチンコで作った借があり、複数の消費者融から督促を受けている。
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さらに個の借もなり、事件直には返済を迫られていた。
捜査員が斎藤の妻から話を聞くと、もっと自然な事実がてきた。事件当の午2頃、斎藤は普段なら里帰りを嫌がるはずの妻と学の娘へ、「数ゆっくりしてこい」と言って交通費まで渡し、半ば引に実へ送りしていたのである。
妻は理由を尋ねていた。
斎藤の答えは。
「今週に、全部の借を理できるかもしれないから」
犯の約13。
野はその報告を度読み返した。
しかし決定打にはならない。借があったことも、藤にがあるとっていたことも、族を留守にしたことも、それぞれ単独なら説はできる。捜査員が先入観だけで斎藤を犯へ仕てれば、本当の犯を逃す危険さえあった。
そこへ別の捜査員が、灯油販売の聞き込み結果を持ってきた。
「斎藤は17の夕方、携缶で灯油を買っています。量は18リットルです」
「の用じゃないのか」
「にも同じ量を買っています。妻子が留守になったで、が使う量としてはしいです」
野は腕を組んだ。
災現の灯油。
斎藤のの傷。
由里が残した皮膚組織。
の補償。
族をざけた。
本本は細い糸だったが、その先が同じ物へ集まり始めている。
それでも逮捕できるほどの証拠ではない。
野は捜査員たちへ言った。
「を追え。