"灯油札の密告" 第4話
むしろ、分かりやすすぎるみが真犯を隠す煙幕になることの方がい。
もうの藤は、由里がと結婚するに交際していた男だった。別れたもしつこく連絡し、度は彼女のので騒いで警察汰になっている。数にのくで姿を見たという曖昧な証言もあり、由里への執着が続いていた能性が捜査本部で取り汰された。
しかし藤にもアリバイがあった。事件当夜は松本内の裏賭博に滞し、午1には客と揉め、午330分頃にも内で暴れて複数に止められていた。の防犯映像と証言が致し、午3台にへいることはできなかった。
目の夕方、野は藤の名にも赤線を引いた。会議にい沈黙が落ち、若い刑事のが「流しの盗ではないでしょうか」とにした。補償が入ったという噂を聞いた部のが、を狙って侵入した能性を考えたのである。
野は現写真を枚持ちげた。
「から来たが、どうしてこの裏を選べる?」
写真には藤の裏を通る細いが写っていた。垣と斜面のを縫うように続き、昼でもらない者なら入を見落とすような所だった。表通りからへ入れば誰かに見られる能性があるが、このを使えば勝のすぐくまでほとんど目につかず接できる。
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「それだけじゃない。勝が普段ほとんど使われていないことも、族が何頃寝るかも、灯油がどこに置いてあるかも犯はっていた能性がい。玄関の鎖も勝の横も、にわせて準備されている」
会議に並ぶ刑事たちの表が変わった。
「のですか」
「のと決めつけるな。ただし、藤へ何度も入りしたことがあるを優先して洗う」
親戚、仲、所の、からを借りた者、の修理を伝った者。藤の活へづくことができたの名が、ホワイトボードへ次々とき加えられた。
そのに、斎藤正もいた。
ただ、この点で斎藤をく疑う捜査員はなかった。葬儀の準備を誰よりに伝い、由里の両親を支え、湊の写真ので何度も泣いている姿をくのが見ていたからである。事件も「に恩を返せなかった」と話し、捜査への協力を自ら申していた。
野はその評判を否定しなかった。
しかし同に、刑事としてっていることがあった。
を殺すほどのは、憎しみだけからまれるわけではない。謝、依、劣等、羞恥、嫉妬。それらがいをかけて絡みい、本にさえ説できない形で憎悪へ変わることがある。
そのの午、野はが勤めていた炭へ向かった。
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事務所で話を聞いているうち、の鈴が何気なくにした言で、事件の輪郭がわずかに変わった。
「そういえば、最まとまったが入ってたんですよ」
拡張によるの補償だった。総額は1000万円を超え、その部をは現で持ち帰っていたという。
「現をへ?」
「が嫌いなところがありましてね。み会で、い壺に入れて隠してるから棒だって見つけられないって笑ってました」
「その話を聞いたは?」
鈴が当の参加者をいしていく。
。
その最に。
斎藤正。
野は名簿の名を指で押さえた。
「斎藤もここで働いていた?」
「たまにです。が正を放っておけなくて。仕事がないに当を払って伝わせていました」
別の従業員が、し気まずそうにを挟んだ。
「斎藤さん、さんに世話になってるのを嫌がってましたよ」
「嫌がる?」
「酔うと々言ってました。『俺を乞みたいに扱いやがって』って。でも翌はまた普通にげてました」
野は窓のへ目を向けた。たいの、の煙突から黒い煙が細くちっていた。
斎藤はを「恩」と呼んだ。
だが。
助けられたが、必ずしも恩をしているとは限らなかった。
藤の葬儀は、事件から数、からしれた町の葬祭でわれた。
祭壇にはの遺が並び、は作業着姿で照れたように笑い、由里は湊の肩へを置いていた。