"灯油札の密告" 第2話
やがて太い梁が折れる音とともに根の央部が崩れ、その瞬、のからの声は完全に聞こえなくなった。
鎮したのは午440分を過ぎてからだった。消防隊員が内部へ入り、しばらくして、由里、湊のがので見つかったことが伝えられると、たちは誰も言葉を発することができなかった。斎藤だけがのに崩れ落ち、「俺がもっとく気づいていれば」と何度も繰り返した。
夜がけ始めた頃、県警の捜査員が現へ到着した。指揮を執る野隆志が規制線の内側へ入り、最初に見たのは黒く焼けたではなく、玄関に残された太い鎖だった。
「事じゃないな」
隣にった部の佐々が無言で頷いた。野は焼けた勝へ回り、い釘で固定された横を確認してから、ゆっくりと全体を見渡した。
にいたが逃げられないようにしたで、が放たれている。
そう考えるしかなかった。
現をれようとした野のところへ、斎藤がづいてきた。「刑事さん、頼みます。犯を絶対に捕まえてください。は俺の恩だったんです」と泣きながら野の腕をつかんだ。その拍子にジャンパーの袖がめくれ、斎藤の首がした。
そこには、の甲から腕の内側へ向かって、ほぼ平にる本のしい傷があった。
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野が瞬だけ線を止めると、斎藤はまだ何も尋ねられていないのに、慌てて袖をろした。
「これですか。野良猫に引っかかれたんですよ」
野は「そうですか」とだけ答えた。
その点では、ただのさな違だった。
けれど数、その本の傷には、まったく別のが与えられることになる。
午11を過ぎた頃、野は司法解剖を担当する篠原美子から説を受けた。現を歩いてきた彼にも、今回ばかりは報告を械に読み流すことができなかった。災による損傷はきかったものの、がのでどのような状態にあったかは、残された痕跡からしずつらかになっていた。
には、災だけでは説できない部の損傷があった。い属製の具にい物で複数回殴られた能性がく、なくとも最初の撃はがきているに加えられていた。呼吸器から量の煤が確認されなかったことから、が本格に回るにすでに篤な状態になっていたと考えられた。
「梁が落ちた衝撃という能性は?」
野が尋ねると、篠原は首を横に振った。建材の落でじる損傷とは位置も形も違い、同じような力が何度か加えられていた。最初の撃で倒れたも、犯は攻撃をやめなかった能性があるという説に、野は黙って資料へ線を落とした。
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由里にも部への打撃があったが、彼女はそのでは命を失っていなかった。煙を吸い込んだ痕跡がはっきり残っていることから、が放たれたに識を取り戻し、勝へ向かって移したと推定された。現で発見された位置と、勝の内側についた何本もの引っかき傷が、その推測と致していた。
さらに、由里のには犯へ抵抗した跡が残っていた。爪のから本のものではない微量の皮膚組織が採取され、DNA鑑定へ回されたという。野のに、事件現で見た斎藤の首がすぐ浮かんだが、まだそれだけで結論をすことはできなかった。
篠原はしを置いてから、もうつの所見を説した。由里が識を失っていた帯に、本のに反する性な被害を受けた能性を示す痕跡が確認されたという。野は資料を持つに力を込めたが、被害の詳細を掘りげることはせず、犯が単なる品目の侵入者ではない能性だけをに刻んだ。
「湊君は?」
野が尋ねると、篠原の表がわずかに沈んだ。7歳の湊には、に見られたような直接の暴痕は確認されなかった。しかし煙を吸い込んだ痕跡はく、が広がったあともしばらく内で呼吸を続けていたことが分かった。
湊は自のベッドので見つかっていた。
現写真を見直した野は、子ども部のい壁に残ったさな形と、廊へ続く煤のい跡に目を止めた。